第3章 セイロウ島
「あらら、ほっぺた真っ赤っ赤。リンゴちゃんみたい」
「媚薬盛られちゃったのね、可哀想に。大丈夫よ、すぐ気持ちよくしてあげる。ほら、ちゅー」
「んん……」
生まれて初めて目撃した女同士のキスシーンに、顔が熱くなるのを感じながらローは顔をそむけた。知識として知ってはいても、実物を目にするとすごいインパクトだった。
「頼むから部屋でやってくれ……」
「あら、船長命令ね」
「ほら、船長さんに手を振って」
娼婦に手を振らされて、ローにバイバイするを見送るのは、なかなか複雑な気分だった。大丈夫なんだろうか。
「さてじゃあ、次は船長さんの番よ?」
(う……)
20人弱の視線が一斉に集中し、ローはたじろいだ。正直みんな美人で同じに見える。
「とりあえず……酔っ払いは勘弁してくれ」
「えー!」
ベネッタと呼ばれた赤毛の娘が声を上げ、ハッとして「酔ってないわ!」と言い張り始めた。
「ダメでしょ。ベネッタ、アウトー」
「だからいつも控えめにしときなさいって言ってるのに」
「仕事のときまで飲み過ぎちゃうんだもの」
「だってだって、飲まないと緊張しちゃうんだもの~」
ぐすんと泣き真似をしながら、諦めたのかベネッタはさらに飲み始めた。誰かツッコめ。
「さあ、ほかはみんなシラフよ? 次の条件は?」
迫られ、困ってローはマダム・シュミットをうかがった。ニヤニヤしながら完全に成り行きを見て楽しんでいる。恩人と言う割には助けてくれそうにはなかった。
「あとはクジでも引いて決めてくれ」
帽子を引っ張り、目をそらしてローは言った。ブーイングが起きるが、マダム・シュミットだけがからからと笑う。
「いいのかい」
「もてなしなんだろ? 選ぶ立場でもねぇ」
「ふーん、じゃあ、あんたたちクジ引いて3人――」
「1人!」
そこは譲らないと主張して、ローはさっさと部屋へ向かった。後ろでは何クジにするかで女たちが揉めていた。
(なんでもいいからゆっくりやってくれ……)