第3章 セイロウ島
「ふふ。彼女らの分も私達が働きますよ、マダム」
再会の抱擁を望まず、マダムに付き従う娼婦たちが頼もしく笑った。100人弱の娼婦たちは、まるで女の縮図のように二組に分かれていた。
男を必要とする女と、必要としない女に。
さて、とマダム・シュミットは船長に向き直った。
「島にはまだ海軍がうろついてる。北側に回りな。隠し入江がある」
マダム・シュミットの指示に従い、ポーラータング号は洞窟の中の小さな入江に停泊した。
「……なるほど? 海賊を潜伏させたり、海軍をこっそり呼び込むには最適だな」
洞窟の中は小さいながらも船着き場が整備され、地上に向かって階段が伸びていた。おそらくは地下道を通じて、島にいくつもある秘密の出入り口につながっているんだろう。
「あんたらには世話になったね。一緒に来な、娘たちも礼がしたいとさ」
「今度は本当にサービスするわ、海賊のお兄さんたち!」
港で下りなかった仕事派の美女たちが、黄色い声を上げて投げキスを送ってくる。
「マジで!?」
「頑張って良かった……神様ありがとう。俺あしたからも生きる気力がわいてきた」
しみじみと感激するペンギンとシャチにまじり、頬を染めたベポが娼館の女主人に尋ねる。
「メスのクマいる?」
はじめてマダム・シュミットはたじろいだ。
「クマは……あいにく。そこまでマニアックな注文受けたことがなくて。悪いね」
「当たり前だろ、人間の娼館だよ!!」
「すいません……」
うらだれるベポに娼婦たちは驚きの声を上げた。
「打たれ弱!」
「クマなのに……」
「戦闘中はあんなに機敏に動いてたのに……」
「すいません……」
さらに落ち込むベポにおそるおそる触り、「あらフカフカ」「やわらかーい!」「チャックはどこにあるの?」と娼婦たちはちやほやした。
「なんでお前が一番モテてんだよ!!」
「すいません……」
謝ってばかりのベポをなぐさめるべく、マダム・シュミットは提案した。