第3章 セイロウ島
「キャ、キャプテーン!!」
「…………」
ドタドタと走って来たシャチを見て、ローは心底嫌な顔をした。
聞きたくないという顔をされ、怯んでシャチは口をつぐむ。ため息をついてローは尋ねた。
「……なんだ」
「あの、例のマダムが敵船に油まいて火つけちゃったんですけど」
「女どもは全員こっちに乗せたんだろ。なら放っておけ」
「ええっ、略奪もせずに?」
ペンギンまでそりゃ問題だという態度だったので「ならお前らでめぼしいもん漁って来い。見つけたもんは全部やるから」とローはそっけなく言った。
「ってキャプテンどこへ?」
「ブリッジだ。船を出さなきゃならねぇだろ」
「それ俺らを待つ気ないですよね!?」
「泳いで帰って来い」
「いやいやいや、ここグランドラインですよ!?」
そんなこと知るか、と無視してローは出発のための作業に入った。
◇◆◇
「ベポ……?」
「! 気がついた?」
女子部屋のベッドに寝かせる途中で目を覚ましたを、ベポは丁寧に下ろして毛布をかけた。
「俺心配したんだよー! 気がついてよかった!!」
「あ、ベポ……今はガルチューだめ」
甘噛みしようとしたベポを、は赤い顔で押し留めた。
「ええー……」
「ご、ごめんね。あした! あした今日の分もするから!」
しょんぼりと肩を落として、ベポは「わかった」と頷いた。
「顔赤いもんね。熱がある? キャプテン呼んでこようか?」
「へ、平気!」
キャプテンの単語に、は飛び上がって勢いよく否定した。そしてうかがうようにベポに尋ねる。
「……ベポ、キャプテン怒ってた?」
「に? うーん、そんな感じはなかったけど。何かしたの?」
「……セクハラ未遂」
「が? キャプテンに? ガルチューしたの?」
「そんな感じ……未遂だったけど」
「じゃあ大丈夫だよ!」
脳天気にベポは言い放った。毛布をかぶっては「そうかな……?」と不安そうにする。