第3章 セイロウ島
「まだなんか心配ごとがあるんですか」
シャチと一緒に追い払いそこねたペンギンに、ローは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「……クスリは全部除けてねぇ。鎮静剤打って今は眠らせてるだけだ」
「え!? それ起きたらどうすんですか」
「あとで考える!! いいか変な気起こすなよ!? ベポ、ペンギンが女子部屋に近づいたら容赦なく殺れ」
「え、えー……」
毛布にくるんだを抱きながら、その船長命令は聞いたものかとベポは困り顔をした。
それでもに近寄るペンギンには警戒を示し、さっと腕の中の彼女をかばった。
「何もしないって。連れてく前にちょっと顔見せて」
頭部から出血した血が流れて乾いた顔をこすって、「あーあ傷だらけ」とペンギンは苦笑した。
純粋に顔を見て安心する様子に、ベポもローも警戒を解いた。
「うちで一番無茶するのはキャプテンだと思ってたけど、一位更新かな?」
「……俺はともかく、に関しちゃ同感だ」
「無事で良かったよねー。俺心配で泣きそうだった」
ぐすっと鼻を鳴らすベポを、ローとペンギンはなぐさめるように軽く叩いた。
「さてじゃあの顔も見たし仕事に戻りますか」
まだもうひと仕事だなーとペンギンは大きく伸びをする。
ローもそれにならうべく、さっきまで娼婦たちの対応に当たっていたベポに尋ねた。
「ほかに治療の必要そうな女は?」
「ええとね、見た限りはみんな大丈夫そう。あってもかすり傷ぐらいだったよ」
「俺の見た限りもそんな感じですね」
ペンギンが同意し、なんとも言えない顔でを見た。
「……マジでなんでだけこんな重傷なんスか」
「さあ。……聞いたら怒りそうだから聞いてない」
事情聴取は回復してからだ、と暗い顔で言う船長は、だいぶ心労がたまっているようだった。ずっと鬼みたいな顔での心配をしていたし、「疲れた寝たい」と顔に書いてある。
を寝かせに行ったベポを見送り、「あとは島まで何もないといいですね」とペンギンは呟く。
「あってたまるか」