第3章 セイロウ島
シャチの言い分はもっともで、ペンギンにもキャプテンをかばう余地はなかった。
(でもシャチの気持ちもわかってるだろうし、そんな付け込むような真似するかなー)
しかしキャプテンを信じろとも言えなかった。だって自分が彼の立場ならあんなを前に我慢とか無理。
「キャプテンなら黙ってても女寄ってくるだろ!? ぐらい俺にくれてもいいじゃん!!」
「ぐらいってなんだ……」
げっそりした顔で噂の船長は手術室から出てきた。「!!」と中に駆け込もうとしたシャチを捕まえて「面会謝絶だ」とどすの利いた声で言う。
「えらく早かったですね」
「……何の想像してんだよ。体をバラして媚薬の成分を取り除いただけだ」
「え……してないんですかキャプテン」
素でびっくりしているシャチの顔を掴んで、ローはがさらわれた時みたいな恐い顔をした。
「俺の船でそういう行為は禁止だって言ったよな? まさか忘れてんのかこの脳みそは。ああ!? そんなに分解して診て欲しいか」
「……すみません。覚えてます。ごめんなさい。俺キャプテンを疑ったことなんて人生で一回もないです」
真っ青な顔で泣きながらシャチはへこへこと謝った。
「さっき俺のクルーへの侮辱が聞こえた気がしたが? なんだ『ぐらい』って」
「言葉のあやです。を侮辱したつもりはないです。ちょっと、あの、マジで痛いですキャプテン……っ、痛い痛い痛い! 本当にすみませんでした!!」
「まだ片思いの清算ができてねぇなら、いくらでも一人旅でも失恋旅行でも送り出すが?」
「それ暗に船を下りろって言ってます!? ごめんなさいごめんなさい、本当にどうかしてました!!」
土下座してシャチはローを拝んだ。
「反省したなら船を動かす準備をして来い。女どもをさっさとセイロウ島に戻さなきゃならねぇだろうが」
「アイアイ、キャプテン!」
この場から逃げられるならいくらでも働きますとばかりにシャチは全速力で駆け出した。
代わりにローは女たちの保護に追われて走り回るベポを呼び止める。
「を部屋に連れてけ。いいか、絶対に中に誰も入れるな。を中から出すな」
「アイアイ、キャプテン!」