第3章 セイロウ島
「泣くなよ、もう……」
同じくらい泣きたい気分でローは乱暴に髪をかきあげた。
シャチが邪魔しに来なければ危なかった。大方マダムにでも話を聞いて許すまじと妨害に来たのだろうが。
「キャプテン、好き……」
泣きながら告白されても、シャチが外で騒ぎ続けているおかげでなんとか冷静なままでいることができた。というか状況がシュールすぎてもうとてもそんな気分になれない。
「そういうリップサービス禁止だって言っただろ」
「ウソじゃないもの……」
「ウソじゃなくてもダメだ」
なるべく無心で会話し、もう埒が明かないのでローは問答無用でを分解した。
「……っ!?」
「じっとしてろ、切り刻んだらすぐ終わる」
「……キャプテン私、なんだか体がバラバラになってる気がするけど気のせい?」
ぴょこぴょこと切り離された手を動かして、は「????」と初めてベポに触ったときみたいな反応をしている。あまりに驚きすぎてさっきまでのしっとりした気分も――一時的にだろうが――どこかに行ったようだ。
「これからもっとバラバラにする。気を楽にしてろ」
「……50人の海兵をバラバラにしたのもこういうこと? バラバラにしたけどみんな生きてるの?」
「さあな」
はぐらかすと腕だけになったの手が手探りでローを探し、顔に触れた。オペから手が離せないので好きにさせながら、ローは「なんだ」と尋ねる。
「……キャプテン意地悪な顔してる」
お見通しだとばかりに、にんまり笑っては言った。負けじとローも言い返す。
「当たり前だろ、海賊なんだから」
◇◆◇
「ひどい。こんなのあんまりだ……っ」
手術室の扉を飽きることなく叩きながら、シャチはとうとう号泣した。
「お前なぁ……」
ペンギンに呆れて声をかけられるが、キッと睨み返してシャチは自分の正当性を主張する。
「俺本当にに惚れてたんだぞ!? この一ヶ月忘れようと努力し続けて、頭を切り替えようとしてきた! なのに船長だからってこんな美味しいところ当然のように持ってくなんてずるい。ひどいだろ……!!」