第3章 セイロウ島
「、クスリ抜いてやる。逃げるな」
「……本当? 船を下りろって言わない?」
期待した目で嬉しそうに言われてだいぶクラっと来た。
「そうじゃない、体からクスリの成分抜いてやる。……待て待て待て!」
差し出した手のひらにキスされ、焦ってローはを抱き上げた。
「ペンギン、処置室開けろ! をオペする!!」
「え、そんな大ケガ――っ」
「緊急だ、急げ!!」
わたわたとペンギンはポーラータング号に戻って手術室の電源を入れる。ローは毛布ごとを抱えて手術室の扉を蹴り開けると、処置台にを下ろして急いで出入り口を施錠した。
「キャプテン……」
する、と毛布を肩から落として、は細い両腕をローの首に回して抱きついた。
かなりの理性を動員して、ローは彼女を引き離す。
「……、今からオペしてお前の体からタチの悪い媚薬の成分を取り除く。おとなしく横になってりゃ、何も痛いことはねぇ。俺の言うこと聞けるな?」
言いながらこのセリフもだいぶどうなんだろうと思った。現にも首を傾げて「お医者さんごっこ?」と聞いてくる始末だ。
「頼むから言うこと聞いてくれ……そうすりゃすぐ終わってお前も正気に戻るから」
船長の威厳を保つ余裕もなく、ローは顔を覆って懇願した。
(こんなラスボス出てくるなんて反則だろ……)
勝てる気がしない。
「言うこと聞くから一回だけキスして……」
泣き出しそうな顔で逆に懇願され、ローは逃げ場を失った。の手がローの頬に触れ、白い指が髪を梳きあげる。帽子が落ち、でもそんなことにかまう余裕もなく、の大きな瞳から目をそらせなくて――。
唇が重なる直前、施錠された手術室のドアが乱暴に叩かれた。
「ずるいですよ、キャプテン!! 俺らには『海に叩き込む』とか『船を下りろ』なんて言ったくせに!!」
血涙でも流してるんじゃないかというシャチの怒声に、すんでのところでローは我に返っての唇を阻止した。
手のひらにの柔らかい唇の感触が触れ、それでさえ意識してしまうと心臓が跳ねる。
(……っ、本当タチ悪ぃな)
しかも拒まれたのを察したはポロポロと泣き出してしまった。