第3章 セイロウ島
「ちょっとはうちの娘たちのことも気にしてもらいたいもんだがね……」
呆れ口調のマダム・シュミットは置いて、ローは鬼哭を掴むと甲板へ走った。
「ああもうあの人は! 船長が一番に切り込んでどうすんだ……っ」
「ベポ追いかけろ、俺らもすぐ行くから!!」
「アイアイ!!」
走っていくベポを「着ぐるみ……?」と見送って、マダム・シュミットは勝手に伝声管を触り始めた。声をかけた先は、街の青年団が汗だくになって燃料を燃やしている機関室。
「船を見つけたよ!! 自分の女を取り戻す気のあるやつは武器を持って甲板に来な!!」
すごみのある低い声に、機関室で男たちの叫び声が上がった。
「……すげー、歴戦の女海賊みてぇ」
ぽつりとつぶやいたシャチを嫌そうに見やって、マダム・シュミットは「海賊なんて死んでもごめんだね」と毒づいた。
◇◆◇
突然の強襲にチェイン海賊団は慌てふためいていた。混乱を利用しない手はなく、ローはベポにハシゴをかけさせると誰よりも早く敵船に乗り込み、自分のクルーを探した。
「、どこだ……!? 返事しろ!!」
「ー!!」
ポーラータング号が接舷したのは、チェイン海賊団の海賊船の左後方。ガレオン船は縦に長い構造をしており船室が下にある。そのため露天甲板はほぼ船の端から端に渡っており、女たちも見た限り甲板に集められているようだ。
(後方にはいない、もっと前か……!)
襲いかかってくる敵をベポに任せて、ローは船の前方を目指して走った。を見つけるまでは能力は極力使うのを避けたかった。でなければサロン・キティの二の舞になってしまう。
(なんで返事がない? の耳なら端から端でも聞こえるはずだ……っ)
後方ではシャチやペンギン、マダムや街の青年団が乗り込んで暴れ始めたようだ。だが安堵するどころか焦燥は増していくばかりで、ローは飛びかかってきた敵海賊を刀の鞘で殴りつけると海に蹴り落とし、先を急ぐ。
そしてローは船首に、鉄の腕をつけた隻腕の大男を見つけた。
「シェレンベルク――!!」
「……来たか」
敵が振り返り、ローはその背後に探しものを見つけた。