第3章 セイロウ島
自分のことだけならまだしも、彼らはそんな自分と一緒になったキティのことまで嗤うに違いなかった。それだけはどうしても我慢がならなかった。
キティは何か言いたそうにして、結局「好きにしな」とシェレンベルクの道に口を挟まなかった。自由にやらせてくれることがありがたかった。
冷静になって自分の立場を考えてみると、10年以上も海賊をしながら、シェレンベルクの海賊としての立場は決して高いものではなかった。あとから出てきたルーキーが悪名を上げ、四皇とも肩を並べて競り合っているというのに。
(俺には何が足りない……?)
この頃からシェレンベルクは迷走を始める。
一目置かれる海賊になろうとして敵船の乗員を拷問し、捕らえた海兵を拷問し、ミスを犯した自分の部下まで鎖でぶつようになった。
それでも世間の評価は上がらない。新聞を賑わわせるのは四皇や七武海のことばかり。時折それに挑んでは消える海賊の報が載る。
敵わないのがわかっているのに挑むなんてバカのすることだ。シェレンベルクには彼らと戦う考えはなかった。
世間の人間が震え上がるような拷問を考えよう、皆が恐れてかしずくように。そして海賊王への道を自ら進んで開けさせるのだ。
シェレンベルクがどんな拷問をしたか新聞に載るたび、それを見たキティがどんな気持ちでいたかシェレンベルクは知らない。
サロン・キティを訪れるたび、彼女は『海賊なんか辞めちまいな、あんたには向いていないよ』と言った。そばにいてほしいが故の、かわいいワガママだとシェレンベルクは本気で思っていた。
そしてとうとう、取り返しのつかない事件が起きた。シェレンベルクが子供を殺したと新聞に載ったのだ。わずか8歳の女の子だった。