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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第3章 セイロウ島


 捕まった間抜けな海賊であるシャチとペンギンがものすごくバツの悪い顔をしているが、激高する船長はそれには気づかなかった。
 マダム・シュミットは無言で、ローの口におにぎりを突っ込んだ。

「なにふ……っ」
「わめく元気があるんなら、その分体力の回復に努めな。心配でどうにかなりそうな気持ちはわかるが、過ぎたことを今更言って何か変わるかい? こんな時代だ、かわいい娘はいつだって身の危険と隣り合わせで、こんなのは珍しい話じゃないのさ」

 予想外に諭され、ローは黙っておにぎりを咀嚼すると無言で飲み込んだ。マダムの言うことは正論だった。
 落ち着かねばならないのは自分でもわかっている。
 そんなローの忍耐を試すように、おにぎりの中からローの大嫌いな梅干しが顔を出した。

「てめぇ……」
「なんだい?」

 心底不思議そうなマダム・シュミットにいや、と否定し(マダムがローの偏食を知るわけがないから、単純にこれは偶然だろう)、ローは構わずおにぎりを完食した。ここで食べ物の好き嫌いで騒いで無駄な体力を使いたくない。
 を助けるためなら、梅干しの10個20個でも平らげてやる。

「……因果なものだね」
「ああ?」
「奴隷と海賊が好きあったところでうまくいはいかないよ。ひどい目にあった男と女を知ってる」

 しんみりと言うマダム・シュミットに、ローは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「……はもう奴隷じゃねぇし、うちの船は恋愛禁止だ」
「そりゃまた……あんたもなかなか難儀だね」

 哀れみの目で見られてなおさらローは意味がわからなかった。

「マダム、俺達も連れて行ってください……っ!!」

 騒がしく港にやってきたのは、街の青年団らしき若者たちだった。剣やピストルを手に持っているのを見れば、彼らの目的は容易に知れた。

「サロンの女たちが誘拐されたって……! 俺、ビビアンと来年には結婚しようって言ってたんですよ!」
「俺だってサビーネと……!」
「俺はヘレナと……!」

 被害者の会を見るような同情した心持ちでローは彼らを見た。海賊だけではなく、彼女らは街の青年たちもだいぶカモっているようだ。
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