第3章 セイロウ島
「そもそもてめぇらが妙な誤解をしてをさらったのが原因だろうが……!」
「海賊が奴隷の焼印をつけた娘を連れ回してるのを見つけたら助けるのは当たり前だろう! あんた医者ならなんであの焼印そのままにしてるんだい!!」
「好きで放置してた訳じゃねぇ! タイヨウの海賊団みたいに上から別の焼印を押せってのか!? 俺は医者だ、そんな感染症の危険もある乱暴な方法が取れるか! それともてめぇの背中の皮でも剥いでに移植してやれって!? ……また鬼だの何だの言われるじゃねぇか」
正直あの不信の目はかなりこたえた。二度とにあんな目で見られたくない。二度と。
「あいにくあたしの背中は火傷でいっぱいだよ。……あの子を取り戻したら解決してくれそうな人を紹介してやる」
焼け落ちる寸前のサロン・キティから脱出を図りながら、二人の目的は一致していた。
「……海賊なら船は持ってるんだろうね?」
「ああ、自慢の潜水艦だ。潜りゃそこらの船の倍は速い。……場所はわかるのか?」
「海賊が女をさらったらあとの行動は決まってる。散々楽しんだ後にヒューマンショップに叩き売るのさ。ここから最寄りのヒューマンショップは、ログを2つ辿った先にある」
「それじゃ遅ぇ!! あいつらがヒューマンショップに現れるまでバカみてぇに待ってろってのか!?」
にそんな思いをさせるわけにはいかないのだ。
「世の中そんなに甘くはいかないんだよ。……普通はね」
マダム・シュミットはロビーに置かれていたアンティークの引き出しから小箱を取り出すと、中の紙切れを確認して箱ごと胸に抱え込んだ。
「それは?」
「ビブルカードという。グランドラインの後半、新世界で作れる『命の紙』さ。この紙はどんなに離れてても引き合う性質がある。これは最後にさらわれたマルガリータのビブルカード。あの子だけはちょっと事情が違ってね、店には出さずにうちで匿ってたのさ。この紙が動く先にあの子はいる」
言ってマダムはシェレンベルクにやられて伸びていたシャチとペンギンを蹴り起こした。
「あたしらよりよっぽど軽傷のくせにいつまで寝てんだい!!」
悲鳴を上げて二人は飛び起きた。
「キャプテン!?」
「は!?」
「……連れて行かれた」
「ええー!?」