第3章 セイロウ島
この復讐劇のためにこいつがマダム・シュミットに恨みを持つ海賊たちにこの島のエターナルポースをばら撒いたのだとローは理解した。
「……客じゃねぇし、こいつも娼婦じゃねぇ」
「哀れなもんだな……ここの女に惚れるのがどんなに無意味なことかまるでわかってねぇ」
「だから娼婦じゃねぇって言ってんだろうが――!!」
能力の多用とマダム・シュミットにやられた傷で疲労困憊だった。ROOMは使えてあと一回。それも広範囲に広げる余力はなく、ここからを逃がすのは厳しい。
「カウンターショック!!」
渾身の力でローはシェレンベルクに電撃を与えた。どこまでも伸びる鎖から逃れ、ここから離脱するにはシェレンベルクを行動不能にするしかない。
(鎖が邪魔で落とし穴には落とせねぇ、これしか――!!)
全身を駆け巡った電流は細胞を焦がし心停止するほどの衝撃を与えたはずだが、シェレンベルクは倒れず、ギロリとローを睨んだ。
(ダメか……っ)
鎖が巻き付き、ローは鉄の腕で滅多打ちにされた。
「若造が。普段なら船に連れ帰って死ぬまで拷問するところだが、今日は女どもがいる。惚れた女の無残な姿を見なくてすむことを幸運に思うんだな」
「キャプテン……っ!!」
の悲鳴が聞こえる。助けなければと思うのに体が動かない。
(ここでくたばって何が船長だ……っ)
かかっているのは『頑張ったが敵わなかった』で諦められるようなものではなかった。這いつくばり、立てず、どんなにみっともなくたってここで心を折られるわけにはいかない。
「畜生、を離せ……!!」
「俺らのキャプテンになんてことしやがる……!!」
シャチとペンギンが鉄骨や木材を手にシェレンベルクに躍りかかるが、鞭のようにしなる鎖に吹き飛ばされあえなく撃沈した。
(あいつら――)
彼らの行動はローを奮い立たせた。自分の船のクルーたちが根性見せているのに、船長が情けなく伏しているわけにはいかない。