第3章 セイロウ島
フラフラの足取りで立ち上がるとは手探りで手すりを探す。それがどれくらいの高さか、彼女は理解していたのだろうか? 見えるのと見えないのとではこの場合、どちらの恐怖が大きかったんだろう。
は迷わなかった。口元を結んで覚悟を決めると、ローの声がしたほうへと手すりを乗り越え飛び降りる。
「、ダメよ……!」
とっさに屋根裏へ避難したマルガリータが行かせまいと手を伸ばすが、タッチの差でその手は空を切った。
マダム・シュミットにやられて痛む体を引きずり、ローはを受け止めに走った。使うほど体力を削る能力を大盤振る舞いしたせいで、ROOMがまで届くか自信がなかった。
でもは信じて飛び降りたから、受け止めてやると言った言葉をウソにするわけにはいかない。
「……っ!!」
滑り込むようにして小柄な体を受け止めるとほぼ同時に、四階と三階の廊下が崩れた。上から降ってくる瓦礫からをかばいながら、ローは「なんだよ」と少しだけ笑って呟く。
「見えなくても何を信じるか選べるし、それに命も賭けられるんじゃねぇか……」
大した女だと付け足すのはやめておいた。そう賛美してやるには彼女は少々、泣き虫が過ぎる。
「極悪人でもいいの……見えないことは知らない。わからないんだもの。私には私に見えるキャプテンが全て。他の人にどう見えようと、そんなのどうでもいい……っ」
「……ワガママで自分主義、人の言うことなんか聞きやしねぇ。――は海賊に向いてるな」
泣きながら抱きついてくるの背中をなだめるように叩きながら、ローは笑う。にバレないように。
「ほら泣きやめ、泣き虫。また甲板の罰掃除させるぞ」
「なんでもするから置いて行かないで……っ」
「行かねぇよ」とローが答えようとした時、二人の場所に砲弾が直撃した。
「キャプテン!! ……!!」
吹き飛んだ二人にペンギンとシャチは駆け寄ろうとしたものの、崩れてくる建物に阻まれた。
もうもうと土煙が立ち、二人の姿は見えない。砲撃の被害は一度目よりもさらにすさまじいものだった。