第3章 セイロウ島
敵襲警報と砲撃の音はサロン・キティにも聞こえてきた。状況はよくわからないが、混乱を利用しない手はない。
だがから向けられる不信の目は、説明を後回しにはさせてくれそうになかった。
「、キャプテンは――!」
説明しようとしたシャチを手振りで黙らせ、ローは「手配書の件なら事実だ」と認めた。
の顔が、泣き出しそうに歪む。
「キャプテンは悪い人なの? 私に言ってくれた言葉も全部ウソ……?」
「そんなのお前が自分で決めろ。少なくとも俺はお前に何もウソをついたつもりはねぇ。それをどう判断するかはお前の自由だ」
マダム・シュミットに殴られたときに落とした刀を拾い上げ、「もしここに居たいなら、それもお前の自由だ」とローは突き放すように言った。
「ちょっとキャプテン、何言ってんスか!?」
「を置いてくとかありえないですよ!!」
騒ぐクルーを目線で黙らせ、ローはの返答を待つ。
「信じたい……、信じたいよ、キャプテンのこと! でもこの目じゃ何も見えない……っ、一緒に来いって言ってくれたとき、私をソナーとしてみんなと平等に扱ってくれたとき、キャプテンがどんな顔してたのかわからない! 何が真実なのか、何も見えない……っ」
「見えなきゃ何も決められないって言うならずっとそこにいろ。俺にはお前の目は治してやれない。……お前を置いても、俺達は先に進む」
キャプテンの人でなし、冷血漢!というクルーたちの罵倒は、娼館に直撃した砲撃によってかき消された。
地震かと思うほどの大揺れと共に壁が吹き飛び、おさまった時にはのいる4階から3階にかけての壁に大穴があいていた。
爆風にやられうずくまるのいる4階の廊下が、支柱を失って大きく傾ぐ――。
「! 受け止めてやる、飛び降りろ……!!」
床が傾き、このままでは転がり落ちるのをも理解したのだろう。彼女には見えていないが、傾いた廊下を転がり落ちれば、その先は折れた鉄骨がむき出しになっている瓦礫の山だった。