第3章 セイロウ島
「シャンブルズ――!」
ローが指を返すと、次の瞬間、ロープに捕らわれているのが銃を突きつけた娼婦たちに、それを見張っていた娼婦たちの位置にペンギンとシャチが入れ替えられた。
「お前らを探せ! ここにいるはずだ!!」
返事も惜しんで二人は駆け出した。
「させると思ってんの……!?」
廊下の娼婦たちが解き放たれた人質を再び取り返そうと銃を向ける。着地と同時に彼女らを水平に薙ぎ払おうとして、ローはマダム・シュミットに殴り飛ばされた。ロビーに置かれていたソファやテーブルをなぎ倒し、壁に激突するほどの威力。とても女の拳とは思えない。
「……!! 鉄でも仕込んでるのか、その腕!?」
「昔この島には、九蛇の戦士が隠遁していたことがあるのさ。その時に手ほどきを受けた覇気ってもんだ。能力者だろうと防ぐことのできない戦闘術だよ。……苦界に生きて20年、女だからって舐めんじゃないよ!!」
怒号は空気を震わせ、ビリビリとローを威圧した。
(まるで鋼鉄の女だ、切れる気がしねぇ……!)
切れた唇を拭って、ローは横目でシャチとペンギンの様子をうかがう。銃を持った女たちに追いかけ回されて、二人は
「キャプテーン!」と叫びながら逃げ回っていた。
「……ROOM!!」
能力領域を展開する一瞬の隙を突かれ、再びマダム・シュミットの拳がローの腹部を的確に捉えた。内蔵を突き上げられる、強烈な感覚。
(……!! この、女ヴェルゴ―――!!)
意識が飛びそうになるのを懸命にこらえ、歯を食いしばってローはマダム・シュミットの位置を入れ替えた。
「……!? このクソガキィ!!」
落とし穴に落とされたマダム・シュミットが底から金切り声を上げている。幸い溺れてはいないようだ。
「マダム……!!」
娼婦たちが慌てて娼館の女主人を引き上げにかかる。シャチとペンギンを追いかけていた娼婦もそれどころではないとマダム・シュミットの救出活動に走った。
「はーなーしーてー!!」
四階の廊下に屋根裏へつながる収納階段が落ち、そこを若い娼婦に後ろから抱きつかれる形で止められながら、無理やりが下りてきた。