第11章 死者の夢
『着いた!? キャプテンたちは無事!? みんな生きてる!?』
あまりのうるささに反射的にローは手を伸ばして通信を切った。
リトイと視線が合う。
「怒らないであげて。すごく心配してたのよ。毎晩あなたたちと航海する夢を見るんだと言っていたわ。だからこそ姫様の予言が怖くて、一緒に来たがってたの。あなたとの約束だから、姫様のそばを離れられないって苦渋の決断をしてたけど」
それでもすぐにまた鳴き出した伝電虫に、リトイはうんざりした顔をする。きっと一日何度もかかってきたのだろう。
もう取りたくないという顔をするリトイの代わりに、ローは受話器を取った。
『リトイ! キャプテンたちは――』
「生きてる」
ローが答えるとマリオンは反射的に黙った。向こうで直立不動になったのが容易に想像できる。
「……は?」
無事なのだろうか。受話器の向こうで息をのむ音がして、やはり変化はあったのだと確信する。
『……落ち着いて聞いてキャプテン。実は――』
ガチャン、と話の途中で通話は切れた。
「は?」
ツーツーと不通を表現する伝電虫をローは切れそうになりながら見つめ、かなりの努力をして冷静に、リトイに「かけ直してくれ」と頼んだ。
リトイは四苦八苦し、結局見かねた部下が横からかけ直したが、彼の返答は困惑したものだった。
「……つながりませんね」
「あいつ今度会ったら締める……」
今なにより気になるのがが無事かどうかなのに。
「キャプテン……どうなったの? 結婚して幸せに暮らしてたんじゃないの?」
答えをある程度予想しているのか、やせ細って毛皮が張り付たベポが涙を溜める。
説明しようとして、ローは言葉を続けることができなかった。俺たちを助けるためにまた自分を犠牲にしてしまったんだと、ヘイアン国の人々を守るために、暗い海の底で海神を永遠の眠りに封印したんだと、リトイたちにも説明しなければいけないのに。
(守れなかった……)
一緒にほかの方法を考えようって言ったのに。妙案が浮かぶ前に破滅は来て、ローはまるで太刀打ちできなかった。
に庇われて、守られて、あまつさえ彼女はリトイたちさえよこしてくれた。