第11章 死者の夢
ローの顔を見て、クルーたちはすべて察した。それが命に関わるとわかっているから、みんな必死に涙をこらえる。
「リトイ……手を貸してくれ」
どうしても行きたいところがあって、ローは彼女に肩を借りた。
ピサロに焼かれた全身が痛く、一歩歩くだけで砕けてしまいそうだった。
「右腕……どうしたの?」
外傷があるようにも見えないのに動かない片手に肩を回して、リトイは気遣うように小声で尋ねた。
「悪夢に焼かれて……持って行かれた」
リトイは困惑するが、ローにはそれ以上説明する余裕もなかった。
今にも倒れてしまいそうで、一瞬意識を失っては取り戻し、またなんとか一歩を歩くを繰り返す。
「ひどい島ね……どこを見ても人骨だらけ。何があればこんな景色になるの」
「……みんな幸福な夢を見てた」
わからないとリトイは眉根を寄せる。
道の先に、まだ骨になっていない遺体があった。見覚えのある、その姿。
「青虫……」
「え。人間よ?」
困惑するリトイに首を振って、ローは彼女のそばに座り込む。
遺体の状態からして、島にたどり着いたのはローたちの前後のようだった。完全に事切れてしまって、できることは何もない。
カバンから歴史書が覗いているのに気づいて、ローはそれを手に取る。
「……悪いが埋めてやってくれ。夢の中でずいぶん世話になったんだ。こいつがいなきゃ、俺は悪夢に殺されてた」
「いいけど……あなたはどうするの?」
「ここからは一人で行ける」
歴史書を持って、ローは一歩一歩、足を引きずり、倒れ込みそうになりながら先へ進んだ。
目指したのは家だった。帰るといつもとコラソンが「おかえり」と出迎えてくれた安息の場所。ローにとってこの世で一番幸せでいられた空間だった。
診療所にほど近い、中くらいの庭がついた一軒家。ローの安息の場所は案の定、焼け落ちて跡形もなかった。
だが庭のトネリコの木だけは無事で、巨木に育っていた。
瓦礫につまずきながら、なんとかトネリコの根本まで進む。ほんのつい昨日までここでとコラソンと一緒に幸福に暮らしていたのに、もう取り戻せない現実に打ちのめされた。