第11章 死者の夢
「まだ間に合うから。二人のそばにはいられるよ。……キャプテン、ごめんね」
二人のそばにはいられても、もうローのそばにはいられない。悲しい謝罪が、の最後の言葉だった。
118.白夜に飛ぶ鳥
「……!!」
おびただしい白骨の積み上げられた島の上でローは目覚めた。
彼女を求めて反射的に手を伸ばそうとし、ろくに体が動かず倒れ込む。
(右腕の感覚がない……)
それに焼けただれるような全身の痛み。左腕でなんとか体を起こそうとすると、その手はミイラのように干からびていた。
「ペンギン……シャチ、ベポ……」
仲間たちはごく近くに倒れていた。這うようにして進み、なんとか揺り起こすとかろうじて命はあった。
「は?」
泣きそうな顔をするベポをローは引っ叩く。
「泣くな! いま泣いたら脱水で死ぬぞ」
島に上陸してから2週間近くが経過していた。その間ずっと飲まず食わずで倒れていたようだ。命があるのは何度か雨が降ったおかげだった。
「とにかく水分……点滴が必要だ」
だが誰も船に戻る体力すらなかった。立ち上がることさえできない。
能力を使おうとしたローをペンギンが「死んじまいますよ!」とかすれきった声で止めた。
クルーの中には何人か危篤状態の者もいた。手当てが遅れれば命の関わる。それがわかっているのに誰も動くことができない。
(クソ……ッ)
そのとき船の音がした。
見覚えのある、朱色の鮮やかな木造船。ヘイアン国の特使の船だった。
「ロー!」
甲板にいた衛士姿のリトイが、船の停止も待たずに飛び降りる。
「水よ。ゆっくり飲んで」
飲み込む力さえ弱っていて、ローたちは竹筒に入った水を少しずつ飲ませてもらった。
「なんでここに……」
ローの疑問に、リトイは痛々しい視線を向けた。
「姫様の予言よ。あなたたちが死んでしまうから助けてって」
「は無事なのか……?」
リトイは困った顔をする。
ヘイアン国からこの島までは数週間かかるのだ。彼女が今ののことがわかるわけなかった。
「校尉! 本国から連絡が――」
部下が持ってきた伝電虫をリトイが四苦八苦しながら取ると(どうも彼女は機械が苦手らしい)、マリオンの大声が響いた。