第11章 死者の夢
新しい力を得るためならどんな相手にも頭を下げたし、その上でみんな殺した。戦いは鍛錬と技量の確認でしかなかった。楽しかったことは一度もない。
でもまたいつか大事な人ができるかもしれないから、今は残虐にでも強さを求めるのが正しいと思っていた。
「悪夢だか何だか知らねぇが、よくも姉ちゃんを『また』殺しやがったな」
ピサロを睨んでミギーは拳を上げる。
大事な人の死なんて一度でも耐え難いのに、こいつは二度目をもたらしやがった。それだけで戦う理由は十分だった。こいつを倒したところで何も変わらなくても、不思議と意味はあるように思えた。
炎の剣を構えたピサロから視線だけ移し、ミギーは「さっさと行け」とローを焚きつけた。
「こんなところで体を炭にしてる場合か。かわい子ちゃんがいるだろ」
ローはぐっと唇を噛み、刀を拾って立ち去った。ピサロが放った無数の火球がローを襲うが、横からミギーがはたき落とす。
「さっさと行け!!」
叩き落とした火球は生き物のようにピサロの元へ戻った。
(悪夢とは言ったもんだぜ……っ)
かじった程度の覇気では勝てない。それでも引く気は、毛頭なかった。
117.最後の破滅
何度も見た終わり。何度も見た破滅。
流れ出ていく自分の血を見ながら、前にもこの光景を見た、とコリンは気づいた。
(何度も何度も……どうしてだっけ)
街が燃えて滅びて行くのも、兵士たちがそれを見て笑っているのも、お母さんが大事にしていた結婚のお祝いを無遠慮に掴みだして「俺のだ!」と叫んでいるのも。
これは悪夢だ。でも誰にも覚ます方法がない。ただ終わっていくだけ――それを繰り返している。
「フニャ……キャキャキャ」
動かなくなったコリンを心配して、ミケがすり寄ってくる。大丈夫だよ、と言おうとしてもう声が出なかった。
どうしていいかわからず、ミケが困り果てているのは伝わってくるのに。
破滅の終わりに、コリンはいつも選択を求められた。でもそれが何だったのか思い出せない。
500年も繰り返したのに破滅は変えられない。もう繰り返すことに疲れてしまった。
(このまま眠りたいんだ……)