第11章 死者の夢
116.青虫の意地
「ちゃん、お茶入ったよ」
「ありがとう、コラさん……」
マグカップを受け取ったものの、森のキャンプ地で待機のは口もつけずに落ち着かなく立ったり座ったりを繰り返した。
「キャプテン戻ってきた? まだ?」
「ローは大丈夫だよ」
安心させるようにコラソンは言う。もうなずいて、コラソンの手に促されるままイス代わりの倒木に座ったものの、ささいな物音にまたすぐハッと顔を上げた。
「ケトスの声がする……っ」
「誰? 友達?」
「うん。夢を司る神様なの」
うん?とコラソンは眉根を寄せたが、耳を澄ませて集中しているの邪魔をしないように、尋ねるのは控えた。
みるみるの顔は不安と怯えで歪んだ。
「ちゃん?」
「どうしようコラさん。ケトスが、もう夢の終わりが近いって。誰も生き残れないって言うの……っ」
キャプテンが死んじゃうとパニックになるをなんとかなだめ、コラソンは言い聞かせた。
「ローは死んだりしない」
「現実ならそうかもしれないけど、これは夢だもん。誰も夢の主には勝てない。キャプテンでも……っ」
動揺するをどうなだめようかコラソンは困り果てたが、ふと彼女は黙り、意を決したように顔を上げた。そこにはもう、焦りや怯えはなかった。
「行かなきゃ。キャプテンを夢から助けるの」
決意してしまった強い瞳にコラソンは驚く。止められない、と本能的にわかった。
一度決めてしまったを止めることは誰にもできない。
「……一緒に旅をしてたって聞いて、不思議に思ってた。でもやっぱり、ちゃんも海賊なんだな」
自分が信じるもののために命を賭けてしまえる人種なのだ。は不思議そうに「そうだよ?」と肯定した。
火の手が上がり続ける街とを見つめ、コラソンは顔を歪める。走れない自分の足を疎ましく思いながら、ぐっと彼はの肩を握った。
「俺は行けない。ちゃん、一人で街まで行けるか?」
「大丈夫。人の気配がいっぱいするほうが街だってわかるよ」
は微笑み、ぎゅっとコラソンを抱きしめた。
「大好きだよ、コラさん」
「ああ、俺もだよ。……ローを頼む」