第11章 死者の夢
(なんだろう、首の後ろがチリチリする。嫌な感じ……)
街に戻るのが怖い。無意識にローにすがりつくと、彼は安心させるようにを抱き寄せた。
(もっとぎゅっとして……)
「どうした?」
怖い夢でも見たのかと小声で尋ねる彼の声音は心底優しい。安心させるようにの頭にキスして、髪を撫でる。ローに触れてもらうと、怖いことなんて何もないと思えた。
(このままずっと、一緒にいられたら良かったのに……)
会えなくなるなんて寂しくて悲しい。どうしようもないのに、未練が募って仕方なかった。
いちゃつく空気に耐えられなくなったのか、コラソンがわざとらしくあくびをしながら起き出した。気を使わせたことに気づいて、もローも起き出す。
「おはよう、コラさん」
「おはよう。二人はまだ寝てていいのに」
「お腹空いたからもう起きるよ」
ローはちょっとだけ残念そうに、横からの髪を指で梳く。名残惜しくて、もぎゅっと彼におはようのハグをした。
コラソンは気を使って、一足先にテントから出る。
「おはようのキスが欲しいな」
「しょうがないなぁ」
本当はもローにキスしたかった。頬にキスして、それからまぶた。足りないと言って、彼がの唇にキスを落とす。
(もう最後なんだ……)
こうして触れ合うことは二度とないんだと思うと悲しい。
(離れたくないよ……)
運命も現実も何もかも超えて、望みを叶えてくれる神様がいてくれたら良かったのに。
離れがたいんだと言うようにきつく彼に抱きしめられて、も泣いてしまいそうだった。でも無理にでも笑って、「朝ごはん採りに行こう」とローを誘う。
「何が食べたい? の好きなものにしよう」
抱きしめながら、砂糖菓子にするような甘い声でローはささやく。ちょっと考えて、は「焼き魚」と答えた。
「それは俺の好きなものだろ」
笑って、彼はをぎゅーっと抱きしめた。
「ロー」
テントの外からコラソンが呼ぶ。二度寝したいという彼を、は「起きて起きて」と急かした。
テントから出た瞬間、彼の体がこわばったのがわかった。