第11章 死者の夢
「準備のときからはしゃぎまくってたからな」
「よっぽど楽しかったんだろ」
安心しきった顔では眠っている。たとえ全部が夢でも、そのぬくもりが愛しい。
「……から聞いたんだ。これは全部、夢だって」
驚く様子もなく、コラソンはうなずいた。
「幸福な夢だ。目覚めたくないのもわかる。……でもお前は起きろ、ロー」
「わかってるよ、とも約束した。俺……コラさんに、ずっと謝りたかったんだ」
不思議そうな顔をするコラソンに、ローはを抱く力を強めて告白する。
「俺を助けようとしなきゃ、コラさんは死ななかった」
「俺が助けたかったんだ。お前のせいじゃない、ロー」
コラソンの語気は強く、目はどこまでも優しかった。恩人はそう言うと知っていた。言葉を続けようとして、ローは何も言えなかった。
まどろみながら聞いていたのか、ぎゅっとが抱きついてくる腕に力をこめる。背中をなでてそれに応え、ローは無理して笑った。
「これが夢でも、会えて本当に嬉しかった。……また会えなくなるなんて寂しいよ」
「ああ。俺もだ、ロー」
恩人も泣くのをこらえて笑った。
焚き火が崩れて、自然と眠る時間を教えた。目をこすって、が起き出す。
「今日は3人で一緒に眠ろう? キャプテンが真ん中だよ」
「そうだな。そうしよう」
の提案にコラソンもうなずいて、決して広いとは言えないテントで川の字になった。二人と手をつないで、ローは別れを噛みしめる。
それが3人で過ごした最後の夜だった。
115.悪夢の始まり
(キャプテンがいっぱい、いっぱい、幸せになりますように……)
テントの中で川の字になり、彼の手を握りながらは何度も祈った。
できることならこのまま3人でずっと一緒に暮らしたかった。でもそれはできないから、今以上の幸せを彼が見つけてくれるようにお祈りする。
(大好きだよ……)
ぎゅっと手を握ると、彼も握り返す。最後の夜があまりに惜しくて、みんな眠れないのだ。でも誰もそれを口に出さない。
口に出してしまえば連鎖して止まらなくなるとみんなわかっていた。
やがて夜が明けた。鳥のさえずりと朝露の匂いに、はそれを知る。