第11章 死者の夢
「え。俺お前の前で泣いたことないだろ」
ぴたりと泣き止んでコラソンが言う。ローは顔をそむけて「そうだったかもな」ととぼけた。
「コラさん、お魚これでいい?」
空腹に耐えられないのか、はせっせと夕飯作りに励んでいた。
「上手上手。あとは塩振って焚き火のそばに差しておこう」
「俺がやるよ。コラさんは火に近づかないで」
「ちゃん、ローがいじめる……」
「むしろ優しさだよ?」
がわかってくれるので、ローはいくらでもコラソンに厳しくなれた。
「あとはキャプテンに焼いてもらおうね」
下ごしらえを終えて、はわくわくしながら焼けるのを待った。
「焼けた? まだ?」
「最初に焼けたのにやるから、もうちょっと待ってくれ」
5秒毎に「焼けた?」と聞かれてローは苦笑する。
「ちゃん俺、実は見ちまったんだ。ローがキャンプ道具の中にビール入れたの」
「そんな。お魚焼いてる間に乾杯しちゃうなんて。キャンプ最高!」
「わかったわかった」
それでがおとなしく待ってくれるならと、ローは荷物から全員分のビールを取り出した。
「素敵なキャンプに乾杯!」
「乾杯!」
みんなでビールを飲んで、とりとめのない話に笑う。焼き魚も、飯盒で炊いたパエリアも、待望のマシュマロも、どれもおいしかった。
「キャプテン、お酒おかわり」
「もうない。が飲み尽くしちまったから」
「だっておいしいんだもん」
キャプテンのことだから多めに持ってきてるはず~とは荷物を漁ろうとする。残りを見つけられないように、ローはを膝に抱えてなだめた。
「飲みすぎだ。ドクターストップ」
「キャプテンはまだ飲む気のくせにー」
「そんなことないって。ほら、マシュマロ焼こうか?」
「お腹はもういっぱい……」
拗ねてはローにぎゅっと抱きついた。酔っ払って眠いみたいだった。うとうととまぶたが落ちている。
「ローこれ、ちゃんに掛けてやりな」
荷物の中から毛布を取り出して、コラソンがローに渡した。
「ありがとう、コラさん」
毛布でを包むと、温かさに安心したのか、ことんと眠ってしまった。