第11章 死者の夢
「夕飯捕まえてうれしいのか?」
「それはもちろん、うれしいけど」
は口をとがらせて、小声でささやいた。
「キャプテンと手をつなげるのがうれしいの」
驚くローに、は破顔する。
「目が見えないといいね。キャプテンが自然につないでくれる」
「……がつなぎたいならいつでもつなぐよ」
「つなぎたいからつなぐんじゃなくて、なんでもないときでもつなぐのが嬉しんだよ」
本当に嬉しそうに笑って、はローの手をぎゅっと握る。ローが握り返すと、楽しそうに「ふふ」と笑った。
「コラさんただいま!」
お魚いっぱい捕まえたよ!とは自分の手柄のように報告した。
出迎えようとしてすっ転んだコラソンを、焚き火に突っ込む前にローは能力で移動させる。
「あ、ありがとなロー……」
「コラさん気をつけないとダメだよ」
「目が見えないより転ぶの勘弁してくれ……」
二人に注意されて、コラソンは「うっ」と詰まる。
「ちゃんはローが転ばないように見張ってるだろ」
「コラさんのことも見張ってるよ」
それでも追いつかないのだと、ローはジト目でコラソンを見る。
バケツを置いてコラソンを助け起こし、は首をかしげた。
「コラさん私が支えてるときは転ばないのにね」
「ちゃんといるときは気をつけてるから。俺が転ぶとちゃんまで共倒れになっちまうだろ」
「一人のときも気をつけてくれ」
怖い顔で死の外科医に迫られ、大きな男は背中を丸めて「はい」と神妙にうなずいた。
「よーし晩御飯だー! コラさんお魚さばいて」
「すごいな。これ全部ちゃんが釣ったの?」
「釣ろうとしたけどミミズがいないからダメだったの……」
しょんぼりするをなだめて、「昼ならいっぱい釣れるよ」とコラソンはなぐさめた。
「ほんと? コラさん一緒に付き合ってくれる?」
「いいよ。ローはミミズダメだろ」
事実なので言い返せず、ローは無言で薪の束を火の近くに下ろした。
「キャプテン焼き魚好きなのにね」
「ミミズなんかなくても魚は取れる」
「釣り楽しいぞ、ロー。奥が深いんだよ。ちゃんも好きだしな」
「釣りは目が見えなくても楽しめるもん」