第3章 セイロウ島
「火傷の跡がわかるかい?」
これは火傷なのだと、は頷いた。
「あたしの半身はね、海賊に焼かれたのさ。油をかけて火をつけられた。……あたしも昔、海賊に飼われる奴隷だった。この店にはそういう素性の娘が数多くいる。世界貴族の奴隷にされて、その後捨てられたり、海賊にさらわれて命からがら逃げ出したような女たちだ。命は助かれど、汚れた体で故郷に帰ることもできない。かといって運命を嘆くだけなんてまっぴら! あたしらをこんな目に合わせた海賊どもに復讐しないでおけるかい!? ここはそのための反撃の城だ。鼻の下を伸ばしてやってきた海賊どもを片っ端から捕まえて海軍に引き渡し、呼ばれれば政府の要人とも寝に行って情報を掴む。女を武器に世界と渡り合うのさ。そして同じような境遇の娘を見つけたら助け出す活動もしている。……あんたのことは、服屋の店主が知らせてくれたんだよ。ここからログを2つ辿ったところに、ヒューマンショップがある。そこに奴隷を出品しようって輩は、少しでも値を釣り上げるためにここで奴隷のための服を買って小奇麗に見せようとするからね。そういう娘を助けるために、あの服屋の試着室には抜け道を作ってあるんだ」
多大な誤解があるのを認識しつつ、はまず一番気になっていることを確認した。
「あの……うちの船のシャチとペンギンがここに来たはずなんだけど――」
対応に当たったらしい、ハスキーボイスのお姉さんがこともなげに答えた。
「ああ、あの懸賞金もかかってない二人? 酒にクスリを混ぜてさっさと寝ちゃったところをロープで縛り上げてあるよ」
(不憫すぎるよ……!)
シャチの失恋を気遣って、船長が仕事を代わってまで送り出してあげたのに。あまりの事態に顔を覆っては二人――特にシャチ――に同情した。
◇◆◇
船に戻ると、船体にはハートの海賊団唯一の賞金首である、船長の手配書が打ち付けられていた。添えられたメモに書かれていたのは――。
『北の海<ノースブルー>の賞金首、トラファルガー・ロー。仲間の命が惜しくば丘の上のサロン・キティに一人で来られたし――マダム・シュミット』
手配書とメモを破り取ると、ローは「ふざけやがって」と低く毒づいた。