第3章 セイロウ島
(キャプテンにバレたら知らない人間にほいほいついて行くなってまた怒られそう……)
なんでそんな訳のわからない状況でついて行ったのかと問われれば、勢いに飲まれたと言わざるを得ない。
『ここにいたら危険なの。悪い海賊があなたを売り飛ばそうとしてる。安全な場所に連れて行くから!』
今朝のフッカー海賊団のこともあり、ひょっとして彼らが追いついて、復讐をかねて自分を狙っているのかと考えてしまったのだ。
一度飲まれてしまったら後は完全に相手のペースで、何かおかしいと思っても、そのたびに「ケーキはいかが? 紅茶は? お砂糖はいくつ?」と絶妙なタイミングで気をそらされる。
「さ、可愛くなったわ。仕上げにリボンを結びましょう。どれがいい? 可愛いのがいっぱいあるのよ。好きな色を選んで」
髪を梳かしてくれていた女性・マルガリータがうきうきと言った。
しかしは困り果て、はっと気づいてマルガリータは「ご、ごめんね」と慌てて謝りだした。
「あんたが似合うと思うものを結んでおあげよ、マルガリータ」
声はいままでの周りにいた女性たちとは違う、低く渋みのあるものだった。彼女の登場に女性たちが恭しく居住まいを正したのがわかった。
「……あなたがキャプテン?」
「ふふ、面白い言い方をする……いかにもあたしがここの女主人さ。マダム・シュミットと、そうお呼び」
「マダム・シュミット……ここはどこ?」
「ここはサロン・キティ。グランドラインでも屈指の規模を誇る娼館さ。あたしの城だよ」
(サロン・キティ……確かペンギンとシャチの行ったお店)
どうりでいい匂いのする若い女性がたくさんいるわけだ。
「じゃあ……私をここに連れてきたのはスカウト?」
「おやおや……すれてないように見えて、思いのほか世の中の道理がわかってるじゃないか。……当然かね、背中にそんなものしょってたら」
奴隷の焼印のことだ。服屋で服を試着する際、着替えを手伝ってくれた女店主にこれを見られたためにここへ連れてこられたのだとは理解した。
「その目……海賊にやられたんだろう」
が頷くと、マダム・シュミットの手がの手を掴み、彼女の顔に触れさせた。
(なんだろう……皮膚がざらざらしてる)