第11章 死者の夢
「どういう訳か俺のしたこと知ってて、ちょっと拗ねてた。自分も似たような経験してるから、救いを求めた女のことは責められないみたいだった。でも俺にはちょっと怒ってて……あれ妬いてたのかな? 女みたらしだとか団子だとか色々言われたけど、俺はに会えた嬉しさで浮かれてて、何言ったかあんまり覚えてないんだ」
抱きしめたら安心したこと。は精神安定剤みたいだと思ったこと。それはすごくよく覚えているのに。
の髪は撫で心地がよくて、頭をすり寄せてくる彼女を抱いていると、ストレスが全部とけていくみたいだった。
「夢は途中で終わったんだ。騒ぐ奴らに起こされて、それで終わり。続きが見たくて寝まくった。眠れなくなったら睡眠薬まで飲んだのは確かにやりすぎだったかもしれない。でも眠るとに会えるから、船が修理中で他にすることがないのもあって、夢に溺れた」
あれは依存だったと今なら思う。
でもあの時は本当に、とにかくの不在が辛くて、現実を受け入れられなかったのだ。
水を飲み干したグラスにどぼどぼと酒を注いで、ローはそれをあおった。
「眠るたびは会いに来てくれたけど、そのうち泣かれちまった。『ちゃんと起きて生活して』って。自分のせいならもう来ないって言われて、実際それからいくら寝てもは夢に出てこなくなった。俺を心配してくれてたのに、腹が立って仕方なかった。に会えるなら体なんかどうでもよかったし、そういう気持ちをわかってくれないに腹を立ててた。で……むしゃくしゃしてつい」
え、と黙って聞いていたコラソンが目を瞬く。
「何したんだ?」
「……客引きしてた顔なじみの娼婦の誘いに乗っちまった」
思い出すとのたうち回りたくなる。心の底から当時の自分にげんなりして、両手で顔を覆ってローは天井を仰いだ。
「寝るために酒もずいぶん飲んでたし、寝過ぎで頭もぼーっとしてたし、冷静な判断できなかったんだよ……」
ジルの好意は知ってたから、もいないのに断り続けるのも難しかったのだ。
でも気づいたら裸の女が三人ベッドにいたのはさすがにひどかったと思う。心から反省している。その後も何度か似たようなことあったが。