第11章 死者の夢
「夢でにわんわん泣かれて、でもやっと会いに来てくれた嬉しさのほうがでかくて、会いに来てくれないならまたやるってを脅して、また眠りに依存してが会いに来てくれなくなるの繰り返しだった」
夢だと思っていたのだ。
に会いたいあまり、都合よく脳が見せる幻。だからへの怒りというのも実際はきちんと働かない自分の脳へのいらだちで、本当にを傷つけているなんて思わなかった。
「ヘイアン国の海神は夢を司るから、神託を受けた王はその力を借りられるらしい。……でもそれ言われたの最後の最後だぞ? 自分が都合よく見てる幻だと思ってたら本人だって言われて、別れ話持ちだされて。だとしたら浮気になるし、言い訳なんかできるわけないし、不貞野郎と思われてるなら今更『だけだ』なんて口が裂けても言えねぇし……でも正直あれ、だまし討ちみたいなもんじゃないか? 心神喪失状態を考慮してくれよ……」
やけ酒飲もうとしたら空っぽになっていた。何もかも思う通りにいかず、ローはテーブルに突っ伏した。
「に会いたい……やり直したい……」
取り繕う必要のないコラさん相手なので、ローは遠慮なくくだを巻いた。
大きな手がぽんぽんと頭を撫でる。に抱きしめられるような安心感があった。
「……コラさん、俺どうしたらいい?」
返答に困るような沈黙のあと、「運命を信じろ」と彼は言った。
「……成り行き任せってこと?」
「生きる希望を見失うなってことさ」
もう寝ろ、と恩人は笑ってローをベッドに引っ張る。引っ張られながら、ローは「がいないと生きていけない」と嘆いた。
「あした希望が現れる。明日じゃなければその次だ。そう信じて絶望を乗り越えろ、ロー。お前ならできる」
ベッドに寝かせようとするコラソンに抵抗し、「コラさんがベッド、俺が床」とローは頑固に主張した。
「もう3日も床だろ。体痛いだろ」
「全然」
言ってローはさっさと床に敷かれた毛布に横たわる。昔は野宿が多かったから、屋根があるだけ快適だった。
「……コラさん、俺、ここに住んでもいい?」
「お前は海に出たほうがいい。俺のことは気にすんな」
彼は笑って言う。本心からそう思ってるんだろう。