第11章 死者の夢
「相棒が付いて常に一緒に行動するわけだが、こいつが俺の監視もかねてた。腹立つくらい完璧なやつで、連絡ひとつ隠れてできなかったよ。そうこうしてるうちに政府のやばい案件にどっぷり関わっちまって、逆に逃げ出せなくなった。今逃げたらこの世で一番やばい連中に追いかけ回されることになって、関わった人間みんなに被害がいく。――そうしてるうちに何年も経っちまって、ある日任務でドジってこのザマさ」
後遺症の残る体を示してコラソンは苦笑した。
「本当なら解放なんてありえなかった。それくらい、表沙汰にできない政府の秘密をいろいろ知っちまったからな。口封じに殺されるところだったんだが、さっき話した相棒がうまいことやってくれたんだ。任務で俺が死んだように偽装して、この島に逃してくれた。ここは世界政府に加入してないし、海の滝に阻まれた天然の要塞だから、世界政府の目も届かないだろうって。それが3年前だ」
すさまじい話に絶句するローに、コラソンは破顔して身を乗り出した。
「俺の話はこんなところだ。ローの話を聞かせてくれよ」
ローは話した。コラソンと別れてからのこと。北の海で出会った悪友、手に入れた船、航海の日々。
一晩中話しても、なお話題が尽きることはなく、そうして二人は別れていた間の時間を埋めたのだ。
101.後悔
「……ロー、お前なにか隠してるだろ」
そう指摘されたのは、コラソンの家に泊まり込んで三日目のことだった。
診察させてもらった結果、彼の体の状態は思ったよりも悪く、普段はほとんど寝たきりの状態だった。誰かが世話してゆっくりと療養すれば体力も戻るだろうが、不自由な体での一人暮らしは危険で病状を悪化させるだけだ。
「……別に何も」
隠していることはコラソンの病状以外にも、もう一つあった。多分彼は自分の体のことについては気づいているから、言っているのはもうひとつの方だろう。
あんなにコラさんに相談したいと思っていたのに、いざ本人との再会が叶うと、自分の愚かさをさらけ出すようでどうにも気がとがめた。
「クルーで一人、全然話してくれない子がいるだろ」
やっぱりその件かと、ローはニヤニヤ笑うコラソンから視線をそらす。チェシャ猫かと思うくらいのニヤニヤぶりだった。