第3章 セイロウ島
「それでいいのかい? もっとかわいい色のもあるのに――」
「色はわからないからいいの。これが一番軽くて、長さもぴったりだから。それに見て! これ、柄のところが鳥になっててかわいいの」
杖の持ち手の部分がちょうど鳥の頭になっており、折れ曲がった部分が嘴の形になっていた。
「じゃあそれと、ブーツと……あと夏用のサンダルも選んじまえ、」
「ベポみたいなサンダルある?」
「うーん、さすがにサンダルに毛皮はついてないなー。でもこのサンダルかわいいよ。に似合いそう」
「じゃあそれにする」
「履いてみる?」
「うん」
杖とブーツと包みながら、靴屋の店主は「かわいいね」とローに話しかけた。
腕組みしてやりとりを見ながら、ローは否定はせずにおいた。
「どっちも手はかかるがな」
「……ところで着ぐるみ着て、大道芸の人たちかい?」
「違う!!」
◇◆◇
「キャプテンって……ひょっとして妹いる?」
服屋の前での試着を待つ間、ベポの質問は唐突に飛んできた。
「……なんだ、いきなり」
かなり驚いて、ローはまじまじとベポの顔を見返した。
なんとなく、と白いクマは答える。
「の面倒を見るの、ずいぶん慣れてる感じがしたから」
もともと冷たそうに見えて懐の深い船長であるのは長い付き合いで知っているが、への面倒見の良さはそれとはまた全然違った。
何を説明するのも面倒そうな様子を見せないし、それを楽しんでいる節さえある。こんなに楽しそうでよく笑うキャプテンを、ベポでさえ初めて見た。
「妹……」
地面に視線を落として、ローは記憶をたぐる。もう顔もおぼろげな、家族の記憶――。