第11章 死者の夢
不自由な体でコラソンは茶を淹れようとしている。しかし案の定、茶葉をこぼし、やかんを落とし、ローが能力で移動させなければやけどするところだった。
「俺がやるよ、コラさん」
「わ、わるいなロー」
座っててくれるのが一番だと、ローは強制的に彼をイスの上に能力で移動させた。
「オペオペの能力か? 使いこなせるようになったんだなぁ」
「……そう言えば、コラさん、ナギナギの能力は?」
静寂のモアがナギナギの能力を使っていたのを思い出して、ローは尋ねた。同じ実はこの世に2つと存在しないし、能力者本人が死ぬまで能力が消えることはないはずだ。
「北の海でドフィに撃たれただろ? あの時どうも、一回心臓止まったみたいなんだ。その後蘇生されたが、気づいたら使えなくなってた」
そういうこともあるのかと、ローはコラソンの前に湯呑を置いた。縁が欠けて、ヒビが入っている。いかに彼がドジでも、空きの多い食器棚や食料庫はそれだけが理由ではないように思えた。
「……コラさん、ちゃんと食えてる?」
「あー、大丈夫だ。この体だと中々仕事もできなくてな。でも街の人がいろいろと差し入れてくれてるんで、どうにかなってるよ」
心配させまいと彼は笑ったが、実際はそれでは足りていないのだろう。記憶の中の彼よりずいぶん痩せた姿に、それを確信する。
「迎えに行けなくて悪かったなぁ。ドフィに撃たれたあと、2年間昏睡してたんだ。起きた後も自由に身動き取れなくて、3年前、やっと解放されてこの島に来たんだ。お前のこと探したかったが、この体じゃ自分のことすらままならなくてな。すまねぇ」
深々と頭を下げられ、ローは首を振った。
「俺はこの通り生きてるし、そんなのは全然いいよ。大変だったんだろ。……そのケガ、ドフラミンゴにやられた傷じゃないよな?」
一体彼に何があったんだろう。問い詰めるローに、はじめははぐらかそうとしたコラソンも、諦めて話し始めた。
「俺を助けたのはCP-0だ」
「諜報機関の……?」
噂でしか知らぬ名にローは困惑する。ああ、とうなずきコラソンは茶を飲んだ。とたん「あちぃ!」と湯呑を取り落とす。
予想の範囲内だったのでローは能力で落ちる湯呑を止めて、テーブルに戻した。だいぶ冷ましてから渡したのだが、まだ足りなかったようだ。