第11章 死者の夢
クルーたちの視線がそろって船長に集中し、ローは「なんだよ」と低く問い返した。
「俺のせいじゃねぇだろ」
「いやいや、自分の引きの強さ自覚してくださいよ」
「いい意味でも悪い意味でも、キャプテンって強運だよね」
巻き込まれるクルーたちはそろってため息をついた。
「命をかけてまで、どうしてわざわざこの島に来たんだい。言っちゃなんだが、普通の島だよ」
「……伝説の島と聞いて」
「この島では死者に会えるって」
「死者に?」
きょとんとして、島の住人たちは目を丸くした。
「死んだ人にどうやって会うの?」
「ゾンビになるの?」
「ひどいガセだね。そんなことあるわけないだろう」
そろって否定され、がっくりとハートの海賊団の面々はうなだれた。お宝の気配もないし、無駄骨だったようだ。
「どうします、キャプテン?」
「決まってる。ログが溜まり次第すぐに出港だ」
次の航海の計画を立てる大人たちを尻目に、子どもたちはこのあと何して遊ぶか審議中だ。
「アリス。あとで一つ、お使い頼んでもいいかい」
「いいわよ。コラさんのところに持っていけばいいんでしょ?」
店主からおにぎりらしき包みと、シチューの入ったカゴを受け取ってアリスは頷く。
当たり前のやりとりだったが、思わずローはシチューのスプーンを皿に落とした。
100.傷だらけの人
イスを蹴飛ばして立ち上がり、青い顔をするローに、その場にいた全員が驚いた。
「コラさん、って……」
ただの同名の可能性もあった。「コラさん」は決して珍しい呼び方ではない。
「何年か前に島に来たのさ。何かの事故にあったらしくてひどい大怪我をしててね。今も体が不自由なんで、できるところで手助けしてるのさ」
「コラさんドジだから、一人にしとくと危ないしね」
コリンがしたり顔で頷く。その言葉に手が震えた。聞かなければならないのに、声が出ない。やっとのことでローは絞り出した。
「……身長は3メートル超で、髪は金髪?」
まだびっくりした様子で、アリスがうなずいた。
口を覆って、ローは必死にどういうことか考えようとした。でも無理だった。一つのことしか頭に浮かばない。
「知ってる人かもしれない。一緒に行ってもいいか」
迫力に押されて、アリスはちらっとクレアを見ると、こくこく頷いた。
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