第11章 死者の夢
「何に」
「をいっぱい泣かせたこと」
そろってクルーたちに責めるような目で見られてローは言い返せなかった。なんで知ってるんだ。
ちょっと前まで船長があまりにも沈んでいるのでその件については触れられなかったのだが、最近やっと少し元気になってきたので、ここぞとばかりにクルーたちはやり返すことに決めていた。ローにしてみればむごい話である。
ほっぺふかふか~と両手で堪能するアリスに、ベポは尋ねた。
「二人は兄弟?」
「幼馴染」
ぴょんとベポの腕から飛び降りて、アリスは可愛らしい笑みを浮かべた。
「来て。街を案内してあげるわ」
◇◆◇
「シロクマさん、手のひらプニプニね。気持ちいい」
ベポと手をつなぐアリスは上機嫌だった。
「ベポだよ。いいでしょ、俺の肉球、もお気に入りだったんだよ。……夏島じゃ、しっとりしてるって拒まれたけど」
「誰?」
「……友達。ちょっと前まで、一緒に旅してたんだ」
寂しそうに言うベポに、アリスも何か察したらしい。いい子いい子と背伸びしてベポを撫でる。
後ろからそんな二人をコリンが寂しそうに見つめていた。
「ベポと手ぇ繋ぎたいなら繋げばいいだろ。片方空いてるんだから」
「ち、違うよ!」
ムキになって少年は否定した。ははーんさては手を繋ぎたいのはアリスとなんだなとペンギンとシャチはピンと来たが、船長はにぶかった。本気でまったくわからないという顔をしている。
街に向かっているのは北の海からの腐れ縁4人だった。ほかのクルーは船の状態を確認し次第、船番以外は自由行動にしてある。
オレンジ色のレンガで作られた街は、どこかフレバンスに似ていた。豊かで人々の暮らしには余裕があり、市場はにぎわい、道行く人は幸福そうだった。
だがそれだけだ。伝説になるような何かがあるようには見えなかった。
「ここだよ。クレアおばさんのパンが絶品なんだ!」
コリンが案内したのは店内飲食スペースのある、おしゃれなパン屋だった。焼き立てのパンの香りが漂い、ペンギン、シャチ、ベポの腹の虫が鳴いたが、ローは渋面を作った。
「却下」
「えー!!」
ブーイングはコリンだけでなく、ハートの海賊団のクルーからも上がった。