第3章 セイロウ島
「そこ、段差あるから気をつけろ」
「どこ?」
尋ね返す間には段差に足をぶつけ、転びそうになるところをかろうじてキャプテンにしがみついて耐えた。
「だから言ったろ」
「そこって言われてもわからないもん……」
街のメインストリートは石畳で舗装されているが、あまり補修されはいないようで、ところどころ浮き上がっては足を引っ掛けるポイントになってしまっている。
「服より先に杖がいるか……ベポ、売ってそうなところ聞いてこい」
「アイアイ!」
足元がおぼつかないので、はずっとローの腕にしがみついている。
船ではだいぶ慣れて、ほとんどぶつかることもなくすいすい歩けるようになったが、初めての場所ではずいぶんと不安そうだった。
「……街は珍しいか?」
「うん。オークションにかけられるときくらいしか、陸には下りなかったから」
年の割にの言動は幼い。外の世界に触れることもなく、ずっと海賊船につながれていたら当然だろう。
「キャプテーン! 靴屋さんにあるかもって」
またしても着ぐるみ認定されたベポが、そのおかげで有益な情報を持ち帰ってきた。
靴屋についたとたん、ベポが目を輝かせた。
「! 俺の毛皮みたいなブーツがあるよ!」
「本当!?」
「ほら」
棚から取って、ベポはの手に触らせる。
「わー、ホントだ。もこもこ!」
「サイズもにちょうど良さそうだよ!」
「履いてみろ。サイズが合うなら冬島用に買ってやるから」
騒がしく試し履きする二人(1人と1匹?)を店先に置いて、ローは店主に「白杖が欲しいんだが」と要件を切り出した。
「白杖? 白杖ってあの、目が見えない人が使うアレかい?」
店主は人のよさそうな中年の男性だった。少々贅肉がたるんでいるが、指先には革と靴墨の汚れがしみこんでいて、真面目な人柄がうかがえる。
「ああ。ここならあるかもしれねぇって聞いたんだが」
「普通の杖ならあるけどね、白杖はめったに売れるもんじゃないから置いてはいないよ。待てるようなら問屋に注文するが、次の商船が来るまでは半月ほどかかる」
「3日後には出港する。ひとまず普通の杖でいい、見せてもらえるか」
「はいよ」