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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第9章 ヘイアン国


「病院に寄っていきましょうね。飲まされた毒の具合が、まだよくないから」

 犠牲になったのはだけではないのだ。それに気づいて、ローは刀の柄から手を離した。

 山車を見つめるローの隣に、いつの間にか艶やかな着物を着た娘が立っていた。体の具合が悪いのか杖をつき、左腕を吊っている。彼女はローを見つめて言った。

「……この国を救ってくれてありがとう」

 その声には聞き覚えがあった。

「リトイ?」

 驚くローに、彼女は微笑んで見せた。

「幽霊を見るような顔しないでちょうだい」
「生きてたのか……」
「緊急時用に鉄板をかぶせた塹壕を掘ったでしょ。あの中に飛び込んでから起爆したのよ。高熱と酸欠で死ぬかと思ったし、人形の残骸が上に乗って出られなくて死ぬかと思ったけど、丸メガネの学者さんが助けてくれたわ」

 少し離れたところでハンゾーが控えめに手を振った。リトイをここまで連れてきたのも彼のようだった。

「兄さんったら、私が生きてること知ってて葬式出したのよ。そうでもしないとおとなしくしてないからって。幽霊だから言うこと聞かなくていいし、見つけたら布団に押し込んでくれって仲間に言うために」

 シュンならやりそうで、ローは少し笑った。それに満足そうにして、リトイは「あげるわ」と包みをローに手渡した。

「なんだ、これ」
「あなたが欲しがってたもの」

 リトイの言葉で、ローは中身を察した。同時に彼女がある程度の事情を知っていることも。

「……やってももう、わからない」
「赤ん坊が幸福や健康の意味をわかっててお守りを受け取ると思う? 贈る側の気持ちなのよ。……それとももう、彼女の幸福や健康を願ってないの?」
「そんな訳ねぇだろ!!」

 自分でも思った以上に荒々しい声が出て、ローは「悪い」と顔を覆った。ずっと感情が不安定でコントロールが出来ないのだ。クルーに当たらないよう、一人になりたくて外に出てきたはずなのに。

「……私達は無知で、何もわかっていなかった。イナリを倒し、王がいればすべて丸く収まると思っていたの。そのせいで、あなたの一番大切な人に犠牲を強いてしまった。謝って済むことではないけれど……本当にごめんなさい」

 リトイが悪いわけではないのに頭を下げられ、ローは何も言えなかった。
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