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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第9章 ヘイアン国



「見えるかな。夢の中だから、イメージは伝わると思うんだけど」
「うん、わかるよ。不思議だね」

 街の中央の櫓の上に、白い服を着た神官がいる。彼は天に向かって白い矢を放った。
 矢は風に吹かれてある家の屋根に突き刺さり、そこの娘が引かれていく。行く先はアワジ島。海神を鎮める儀式をするための島だ。

 娘は豪奢な神輿に担がれ、連れて行かれる。周囲の人の表情は沈痛そのものだった。
 やがて娘はアワジ島に連れて行かれ、別の神官が鎖につないで祝詞を捧げ、そして去っていった。
 海神がその娘を食らうと、彼女は予言を吐く人形になり、ヘイアン国の人々は彼女に絹の服を着せ、宝石で飾り、王として崇めた――。

「生贄を選ぶのがコマ家、生贄を祭壇につなぐのがイナリ家。一度だってこの島に王がいたことはない。罪悪感から神託を受けた生贄をそう呼ぶだけ」
「マリオンは知らなかったよ……」
「儀式の真実が伝えられるのは、実際に儀式を行うコマ家とイナリ家の長子だけだ。昔は、生贄は誰でもよかったんだ。みんなが<聴く力>を持っていたし、予言もそう複雑で量がなかったから、一人で事足りた。でもだんだん人の営みは複雑化して、戦争もより強力で大きなものになっていったし、その分予言の量も増えた」

 懐かしむように悲しむように海神は語った。

「人からは<聴く力>が失われていった。白羽の矢で生贄を選んでも一人じゃ足りなくなって、コマ家は素質のある人間を探さなきゃいけなくなった。タツオミはそれが無理だと思ったからイナリと手を組んだんだ。彼には人の心がない。人の素質を見抜くのは不得手で、彼の祖父も父もなんとかしようとつきっきりで教えたけど、どうにもならなかった。……でもマリオンが君を連れてきてくれた」

 誰かと話をするなんて数百年ぶり、と海神は嬉しそうにに体をすりよせた。

「100年前から、君のことは予言で知ってた。ずーっと待ってたよ。早く会いたくて、シーレーンとハルピュイアが無茶させてごめんね。君のことをずっと話して聞かせてたから、海賊に捕まってると誤解しちゃったんだ」
「キャプテンって誤解されやすいの」

 セイロウ島でもそんな誤解をされて誘拐されたのをは思い出した。

「色男なのになんでだろうね」
「色男でも目つきがやばい海賊のそれだからじゃないかな」
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