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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第9章 ヘイアン国



「予言を受け取ってもらうため。人の夢を100年むさぼり、次の100年の未来を伝えるのが僕の役目。誰かにそれを伝えないと、僕は次の眠りに入れないんだ。ずーっと話しかけていたけど、声を聞いてくれたのは君だけだった」
「予言をみんなに伝えればいいんだね?」

 そんなに難しいことではなくてほっとしたけれど、海神は言いにくそうに黙り込んだ。

「……予言は100年分、この場で一気に渡さなきゃいけないんだ。受け取ったら君の記憶と人格は、全部塗りつぶされてしまう」
「ええと……?」

 よくわからずに困惑するに、海神はさらに説明した。

「予言を受け取ったら、君はもう二度と喋れない。誰かと話をすることも、体を動かして意思を伝えることもできない。考えることも、何かを聞いたり感じたりすることもできなくなる」

 びっくりしては言葉を失った。

「……死んじゃうってこと?」
「そうだね。ただ体が呼吸して、予言を伝えるだけの人形みたいになってしまう」

 海神の声は申し訳なさそうだった。彼が労ってくれるから、はまだ冷静でいることができた。

「もし私が嫌って言ったら……?」
「儀式の期限は過ぎてしまったから、僕は手当たり次第に近くの人間に予言を伝えることになる。君のように声を聞ける人はいないから、大抵の人間は僕の声を聞くと発狂する。その壊れた頭に僕は無理やり予言を伝えるしかない。予言の1フレーズを繰り返すだけの犠牲者が大勢出る。相手は選べない。手当たり次第に試すことになって、島の人口の半分が無事ですめばいいほうじゃないかな」

 イナリは奴隷を100人仕入れて生贄にしようとしていたが、実際はそれでは全然足りなかったのだ。

「それはちゃんとした王様がいないから? きちんとした儀式が出来なかったからそうなっちゃうの……?」

 マリオンはそれを避けようとあんなに頑張っていたのに。儀式を待たずに自分が海神を呼んでしまったせいかと、はしょんぼりした。

「……儀式は人間が考えたもの。意味はないよ。王様と言うなら、君はこの数百年の誰よりも条件を満たしてる」

 にはよくわからなかった。
 説明するため、海神は夢の中の景色を変える。そこに広がったのは1000年前のヘイアン国だった。
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