第9章 ヘイアン国
セブタン島で実際にその能力を目の当たりにし、ブラッドリーはアルゴールよりもトラファルガー・ローを取った。
(アルゴールが下手を打ったせいで取り逃がしたかと思ったが……進んでこの島に来るとはな。ホワイトガーデンでは一度は捕らえたのに忌々しいものだ。だが次こそは逃さん)
もうじき欲しいものがすべて手に入ると思うと、ブラッドリーは愉快で仕方がなかった。
若さと永遠の命を手に入れ、海神を使ってインペルダウンとマリンフォードを壊滅させる。そうすれば海賊王などすぐだ。
四皇だろうとあの海王類には敵わない。
「工房からの報告です。人形が完成したようです」
知らせに来たのはイナリの配下の人間だった。ブラッドリーは基本的に人間を信用しないが仕方ない。
自分の血をまぜた蝋人形は分身として、見るもの聞くものすべて共有することが出来たが、老いた身では大量の血を抜くことはままならなかった。
「すごい出来でした! あれが動いて戦うなんて……! もう本当にすごかったです。あの人形師は本物の天才ですよ!!」
興奮した様子で報告に来た人間は語った。あまりに絶賛するので、つい気になってブラッドリーは自ら工房に出向いた。
せっかく門番に扮してまで正体を隠していたのに、もう少しで欲しいものすべてが手に入るという高揚感が、彼に油断をさせていた。
工房に行くと、人形師たちがウニの作った人形を取り囲んでいた。
「すげぇ!!」
「本当にこれが動くのか!?」
「ビームは!? これはビームも出ないと完璧じゃないだろ!」
「出るよ」
「マジか!! お前天才!!」
「すげぇ天才!!」
「天才の中の天才だウニ!!」
祭りのような興奮にブラッドリーが覗き込むと、そこに横たわっていたのはロボだった。
超かっこいい巨大ロボ。強そうで硬そうでセンスにあふれていた。しかもコクピット付き。
「――どけっ」
ブラッドリーが触ると、ロボは動き出した。歓声が上がる。理解できないという顔で、歌姫がそんな男たちを遠巻きにしていた。
「手を貸せ、乗る」
人形師たちが騒ぎ立てる中、その権利は自分だけのものだと、ブラッドリーはえっちらおっちらコックピットに乗り込んだ。