第9章 ヘイアン国
時期は合う。そして用心深く正体を悟らせない海賊の性質とも、ガープが語った海賊は合致するように思えた。本人が非力な老人なら何を置いても正体を隠すだろうし、脱獄を試みながら40年も服役したなら、二度とブタ箱には戻るまいと用心深くもなるだろう。
「アルゴールはどこかの国の貴族になるつもりだったと言ってたわね」
「ヘイアン国です」
あちゃーとクザンが声を上げた。
「あそこは今、非常にセンシティブだよ。乗り込むなら時期を見たほうがいい」
「何かあるの? 政治的な話?」
「それもあるが、大きいのは宗教的な話だ。確かちょうど100年に一度の儀式の時期で、これの成否で国の行く末が決まる。失敗したら島よりでかい海王類が大暴れするって話だ。海賊の捕縛のためだろうと、まず海軍は歓迎されない」
「そんなことで怯んだらロシーに笑われるわ」
仕事に燃えて、ロッティはツバメに出港の支度を命じた。
87.ウニの作戦
ブラッドリーがインペルダウンを出た時、その年齢は80を越えていた。
過酷な獄暮らしのせいで体調も思わしくなく、海賊を続けるなんて絶望的。しかし時代は今こそ、海賊王ゴールド・ロジャーの残した宝を求めての大海賊時代だった。
出所後すぐにドルドルの実を食べられたのは運が良かった。獄中で溜め込んでいた幸運が一気に戻ってきたかのように、出所後の10年は驚くほど順調だった。重なる老齢と、悪化する持病を除いては。
(若さが欲しい。永遠の命が欲しい――!!)
あと20年、少なくとも10年あれば自分こそが海賊王になれる。それだけの手応えをブラッドリーは感じていたし、年齢や病気なんかで夢を諦めたくはなかった。
若さと永遠の命を求めてブラッドリーはあらゆる手を尽くした。
情報があればどんな辺境の島へも調査の手を送ったし、伝説のような不確かな情報にもすがった。
『若返りの薬』を作れるアルゴールは、そうした中で唯一手に入れた実現的な方策だった。
だがアルゴールに迎えをやる中で、ブラッドリーはもっといいものを見つけた。
――オペオペの実の能力者。
永遠の命を手に入れる最も確実な方法。人格の移植手術は間違いなくブラッドリーに健康で若い肉体をもたらすはずだった。