第2章 グランドライン
「何回かね。待遇が良くなることもあれば、悪くなることもあったよ。……でも売られた直後は大体乱暴されるから、いつも痛くて苦しくて嫌だった」
肩をすくめて、はもう過去のことだと言わんばかりに、少しだけ悲しそうに答えた。
「……。いいか俺たちは絶対にお前を誰にも売ったりしないし、さらわれたら必ず助けに行く。絶対だ。――信じられるか?」
「うん」
笑っては頷いた。とても嬉しそうに。
どんな金銀財宝を積まれたって、命を奪うと脅されたって、この信頼を裏切るなんてありえないとハートの海賊団のクルーたちは心に刻む。
くしゃりとの頭を撫でて、ローは言い聞かせた。
「だから船長命令はちゃんと聞け」
「うん。……でもあんまり、仲間はずれにしないでね。一人は寂しいから」
甘いと思いつつ、船長は了承した。
「危険がない時はな」
への危険がなくなったので、ハートの海賊団はさっそく略奪作業にかかった。
「金とお宝は少々ってところですね。全部もらっときますか、キャプテン?」
「ああ。あって邪魔になるもんでもねぇだろう。……ログポースはあったか、ベポ?」
「あったよー! それともう一個、変な羅針儀もあった」
「変な……?」
ベポが持って来たのは砂時計の中に針が浮いているような、確かに奇妙な羅針儀だった。
「そ、そのエターナルポースは……っ」
マストに縛られたフッカー海賊団のクルーたちと、マストからヒゲで頭を吊られた船長が一様に動揺した。
「エターナルポース? なんだ」
「エターナルポースを知らないのか!? お前さては――っ」
「ああ、グランドラインには入ったばかりだよ。だから詳しい説明を頼む」
悪巧みが成功した死神のように笑うローにフッカー海賊団の船員たちは悔しがった。
「くそう、まさかこんなルーキーにやられるとは……っ」
「せっかくセイロウのエターナルポースを手に入れて、女どもを叩き売れるチャンスだったってのに……!」
「セイロウ……?」
「キャプテン、この変な羅針儀にもセイロウって彫ってあるよ」
ぺたぺた羅針儀を触っていたが、木枠に彫られた文字に気づいて報告した。