第2章 グランドライン
接舷した船に板を渡し、フッカー海賊団の海賊たちは武器を手に乗り込んできた。
「女をよこせぇ!!」
「誰がやるか!」
「お前らなんかにゃ触らせねぇ!」
ぶん殴っては海に落とし、蹴り飛ばしては海に落としてシャチとペンギンは応戦した。士気は高く、調子もいいようだ。
任せて大丈夫そうだと判断し、ローはフッカー海賊団の船長を討ち取るべく渡し板の上の海賊たちを能力で両断して敵船に乗り込んだ。
「能力者か……!?」
「だったらどうした。せっかく穏便に済まそうとしたってのに」
「ま、待て! もう女はいらん、ログポースも渡す……!」
「もう遅ぇ。一度クルーを狙ったやつを見逃す訳ねぇだろう」
襲いかかる海賊たちをなぎ払い、ローの愛刀・鬼哭はフッカー海賊団の船長の首を跳ね飛ばした。
「船長ー!!」
「船長がやられた!!」
「ど、どうすんだよ!?」
「降参だろ! 他に方法あるか!?」
「白旗を上げろーっ」
「お前ら何勝手なことをしとるんだー!!」
生首状態で船長は叫ぶが、ローにポンポンと頭を投げられ、すぐに黙った。その命運はまさしく掌の上だと、逆さにされた頭でも理解はできたようだ。
「交渉は決裂だ。船の積荷は全部もらう。次にうちのクルーを狙ってみろ、船ごと沈めるぞ」
ガタガタと怯えながら、フッカー海賊団のクルーと生首状態の船長は頷いた。
「もう出てもいい?」
甲板に出る扉をほんの少し開けて、は番人よろしく立っているベポに尋ねた。
「うん、もう大丈夫だよ」
「ベポ、ケガしてない?」
「俺は平気」
「みんなは?」
「ペンギンはかすり傷、シャチはちょっと斬られたが……まあ軽傷の部類だな」
傷を診察してローは「縫うほどじゃない」と結論した。
「キャプテンは?」
「大丈夫だ」
それを聞いてはほっと顔をゆるませる。よかった、と微笑む彼女のために戦った傷は名誉だと思えた。
「……本当は少しだけ、売られちゃうんじゃないかと怖かったの」
「そんなこと――!」
するわけない、と叫びかけたクルーを止めてローは尋ねる。
「売られたことがあるのか」