第2章 グランドライン
「……ログポースの予備ならある。いいだろう、節度があって話のわかる海賊ってのは希少だ。いい出会いをした良き日に免じて譲ってやる」
「……! そいつは助かる」
思わぬ具合に交渉がうまく運びそうで、ハートの海賊団のクルーたちは表情を明るくさせた。
「ほかに欲しいものは?」
「野菜か果物に余裕があれば、それも融通してもらえると助かる。こっちには昨日仕留めたばかりの海獣肉がある。そいつと交換でどうだ?」
「海獣肉は好物だ。次の目的地で食料は調達できるから、野菜も果物も残ってるものは粗方やろう。他には?」
ローはフッカー海賊団の船員たちを見回し、女性がいないのを確認すると「いや、交渉したいものはそれで全てだ」と言い切った。
望み薄の交渉を持ち出して変に勘ぐられたくはない。
「ではこちらの要求を言わせてもらおう」
「ああ、ログポースなら言い値で――」
「金には困ってねぇ! 女がいただろう、ログポースはそいつと交換だ」
その瞬間、交渉の雰囲気は一変した。
「……なんだと?」
「とぼけようたって無駄だ。双眼鏡で確かに見たからな。可愛らしい娘が乗ってるだろう。ちょうど次の目的地に行った後、女どもを大量に売る予定がある。一緒に売れば良い値がつくはずだ」
「うちのクルーだ」
怒りを押し殺した低い声でローは言った。ありえない要求にペンギンもシャチも気色ばんで、一触即発の空気だ。
「どうせ奴隷だろう。ログポースとどっちが大事だ」
「に決まってんだろ!!」
怒鳴ったのはシャチだった。咎める気もなく、ローは告げる。
「うちの総意だ」
「交渉決裂か。残念だ」
「こっちのセリフだ!!」
そして戦闘が始まった。