第9章 ヘイアン国
「ヒューマンショップの爆破は海賊の仕業だと聞いたもの。彼は無事だったんでしょう? なら彼以外に爆破できた海賊はいないはず! きっとそうよ。私を助けてくれたんだわ……」
感極まった口調でリリは言うが、その件に関しては何回も「俺じゃないからな」と船長に否定されている。ヒューマンショップに女の人を買いに行ったのかというの質問も「違う!」と一喝された。
でもそれをうかつにリリには言えなかった。
(なんでキャプテンって彼氏がいる女の子の引きがこんなに強いんだろう……)
「色男の自覚を持って」とお説教したこともあるのだが、効果はなかったようだ。
(歩く女の子ホイホイ……もう女たらしってレベルじゃないよ。今度から女みたらしって呼ぼう)
内心不機嫌になりながらはお茶をすすった。甘味が足りないと切れたかった。やけ食いもできない。
(好きだとか私にしか言ってないとか絶対ウソだ。女みたらしだもん。今だって私がいないのをいいことに他の女の子をホイホイしてるかも……)
ベポを発進させてシロクマパンチさせたくなるような話だった。ひょっとして自分は弄ばれたんじゃないかという気がしてくる。
だってそうじゃなければリリがここまで確信を持って『キラキラうっとり』するだろうか。勘違いさせるような何かをしたのだ。海軍からの呼び出しと言って夜明け前から数時間いなくなったこともあったが、あれも違う女の子のところに行ってたんじゃないだろうか。ダブルブッキングだ。
(無事に帰ってきてくれるかすごく心配したのに!! 最低!!)
本島でローが謎の悪寒に襲われるくらい、はブチ切れていた。怒りすぎて、ローがツバメと戦って怪我して帰ってきたことも忘れていた。
(他の子に夢中だから私のこと迎えに来てくれないんだ……)
さらわれたら必ず助けに行くって約束してくれたのに。
「ねぇ、私と船長さんのこと、応援してくれる?」
「うん……」
キャプテンなんか当てにしないで一人で脱出しよう、とは固く決意した。
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