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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第9章 ヘイアン国



 ブラッドリーを追い詰めるならまずは人形からだ。すべての人形を破壊すれば、奴に打つ手はなくなる。

「なるほど。人形操作人間にとって人形は最大の武器であると同時に、弱点でもあるんですね」

 丸メガネの学者ハンゾーが感心して顎に手をそえた。なんで当たり前のような顔して居るのか知らないが、ツッコむ気力がない。

『ハンゾーもハートの海賊団に入る? 頭いい人がキャプテンしかいないから歓迎だよ』

 ひどいよちゃん、バカ枠で括らないで! いつもやかましいはずのマリオンが一言も発していないことにローは気づいた。
 作戦がうまく行けばブラッドリーは問題ない。イナリも性格はさておき、能力的にはただの貴族の女だ。
 最大の問題は儀式の成否だった。マリオンが選んだ王候補は島に辿り着く前に海に引きずり込まれてしまった。

「……儀式に手伝いが要るなら遠慮なく言え」

 船長に声をかけられ、マリオンは青い顔を上げた。仲間たちも「出来ることは何でもするよ」と心配して請け負うが、彼はゆるゆると首を振るだけだった。

「大丈夫。これは俺がやらなきゃいけないことだから……」
「――具体的に、儀式はどういう手順で行われるものなのですか?」

 身を乗り出してハンゾーが尋ねる。それは好奇心というより、1人で抱え込んでいるマリオンの負担を少しでも軽くさせようとしているように見えた。
 とはいえ手にはしっかりとノートとペンが握られているから、学術的興味がまったくないとは言えないだろうが。

「……儀式が行われるのは100年に一度の朔の夜。コマ家が選んだ王候補を、イナリ家の神官が祭壇のあるアワジ島に連れて行って神と対面させる。神官は神を鎮める祝詞を儀式が終わるまで唱え続ける。海神が王を受け入れ、神託を授ければ儀式は成功だよ。神託は予言のこと。儀式の夜の一晩で、王には今後100年の予言がすべて託けられる。王を認めれば、海神は従順な王の臣下になる。戦を仕掛けてきた他国の軍勢を、王の命令で海神が蹴散らしたこともあるらしい」

 島よりも大きな海神の尾びれを思い出し、ベポがぶるりと体を震わせた。
 あの巨体に暴れられたら人間に為す術はない。さながら超巨大兵器だ。
 メモを取っていたハンゾーが、手を止めてマリオンを見た。

「もし、失敗したら……?」
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