第9章 ヘイアン国
「叩くんじゃなく、なんとかまぎれこめないかな? ブラッドリーの正体も所在も不明だけど、人形を操るには必ず自分で触らなきゃいけない。完成した人形の行方を追えば、ブラッドリーに辿りつけるよ」
ウニの案はローには悪くないように思えた。問題は誰がまぎれ込むかだ。ホワイトガーデンとセブタン島の両方でローは顔を見られてしまっている。
察したようにシャチが手を挙げた。
「俺なら。ホワイトガーデンでブラッドリーと顔を合わせたのは暗い洞窟の中で一瞬。まぎれこめると思います」
さらにウニまで手を上げて志願する。
「ブラッドリーは僕を見つけたら逃さないはず。従うふりして、工房ごと爆破してやる」
「やめろ」
が乗り移っているんじゃないかと思うような無茶な提案をローは却下した。絶対無事にすまないパターンだそれ。
しかしウニは食い下がった。
「なら許可したでしょ!」
「するわけねぇだろ!」
は許可しなくてもやるから、とベポが仲の良かったクルーのことを思い出して鼻をすする。彼女の無茶を美談のように語るのはやめて欲しい。
『キャプテン過保護だよ。自分は平気で無茶するくせに』
(俺はオペオペの能力だってあるし、何より船長だろ)
『差別禁止! 他にいい方法もないでしょ』
キスして口をふさぐという最終手段が使えないとは黙ってくれない。
ローはシャチとウニの志願を受け入れるしかなかった。
「……わかった、その作戦でいく」
え、とクルーたちはもれなく全員びっくりしてローを見た。
「ほ、本当にいいんですか、キャプテン?」
「ああ」
「うそ。黙ってどうやって作戦決行しようか悩んでたのに」
の悪いところばっかり真似するんじゃない。ジロリと睨むとシャチとウニは慌てて「何も言ってないですよ」とばかりに視線をそらした。
「シャチがまぎれ込む職人の店には心当たりがある。弟子入りして作戦を伝えておけ。俺は生産の需要が高まるように、明日から街の人形を壊して回る」
リトイに話してレジスタンスにも人形を襲わせればより効率は上がるだろう。丸鋸のついた四本の腕を振り回すような人形の存在も聞いているが、それは自分が相手をすればいい。