第9章 ヘイアン国
「誰?」
「うちのラスボス……」
「????」
どんなシミュレーションをしたって、最後に必ず勝利の笑みを浮かべているのはだった。それを心底かわいいと思ってしまうから、端から自分の負けは確定しているんだろう。
79.作戦会議
ハートの海賊団のマークが入ったヘイアン国の着物が手に入ると、クルーたちは街を歩き回って情報収集に努めた。
「キョウの街は膝下ぐらいの浸水でしたけど、沿岸部はひどいらしいですよ。津波に家も畑も軒並み流されちまったとか。海神の機嫌ひとつで、王が決まるまでそんな被害が繰り返し出たら、国の人間はたまったもんじゃないでしょうね」
メモ帳をめくりながら、最初に報告したのはゴンザだった。
集めた情報を突き合わせようと、船には船長を初め、クルーが勢揃いしている。どういうわけか丸メガネの学者もしれっと参加していた。
「害獣の被害もひどいらしいです。海神の不機嫌は動物にも伝染するらしくて……シーレーン、ハルピュイア、それに山からでかいクマやトラまで下りてきて街を荒らしているそうですよ」
襲われた少女を助けようとしてケガし、ペンギンは右腕に包帯を巻いていた。に似ていて思わず飛び出してしまったのだが、それは言えなかった。特に船長には。
「普段なら国の兵士が対応するらしいんですが……イナリの命令で港の警備に回されて、代わりの人形は民の声なんか門前払いみたいです」
その人形だけど、とシャチが話を引き取る。
「ブラッドリーはどこかに人形師を監禁して人形を作らせているみたいです。キツネ面をかぶった人形が日に日に増えるって街の人間が不気味がってました」
メモ帳をめくって、「そういえば」とゴンザが付け足した。
「手先の器用な職人が、何人かキツネ面に連れて行かれて帰ってこないらしいです。ひょっとして、その人形工房で働かされてるんじゃ――」
「そこを見つけて叩けば、人形は増えないね!」
ゴンザの推察にベポが名案を思いついた。
がいなくなってから肥満のシロクマはずいぶん痩せた。食欲の化身だったのに、ごはんを残す憔悴ぶりだ。
ダイエットに協力していたがいなくなったら痩せるなんて、皮肉な話だった。