第9章 ヘイアン国
「人形が邪魔なら先にブラッドリーを仕留めるべきだろ。奴はどこにいる?」
「あいつと知り合い?」
「奴には八つ裂きにしても足りない借りがある。俺の獲物だ」
を殴って溶岩に突き落とそうとしたのだ。奴だけは他の誰かに譲る気はなかった。
「……ブラッドリーの居処はわからない。誰もブラッドリー本人を見たことがないの。正体を知っているのはおそらくイナリと数人だけ。それで何度も出し抜かれてる」
「人形に襲撃させて自分は雲隠れか。……セブタン島でもそれでやられたな」
「気をつけなきゃいけないのは人間そっくりの蝋人形よ。どこからか優秀な人形師をさらってきたみたいで、いつの間にか仲間の中にも紛れ込ませてた。ただ数は多くないわ。どうも自分の分身として人形を操るには、自分の一部を人形に大量に練り込まなきゃいけないみたい」
気味の悪い話にローは顔をしかめた。
「一部って?」
「髪や血よ。人形の全身に埋め込む必要があるみたいだから量産の線はないわ」
「……それを解体して調べたのか」
「死体を解体するよりはマシでしょ」
「お前ら……せめてもうちょっと色気のある話をしろよ」
いつの間にか戻ってきたシュンが、呆れた顔で立っていた。
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