第9章 ヘイアン国
「……は?」
ペンギンの顔が歪んだ。
「!」
「ー!!」
マリオンに加えて、シャチ、ゴンザ、泳ぎがあまり得意ではないウニまで海に飛び込んでを探している。
事態に気づいた船団の乗員たちも、明かりで海面を照らして不明者を探す手伝いをしてくれていた。
「……いつまで続けるか決めて下さい、船長」
ペンギンの言葉をローは理解できなかった。
「……を諦めろってことか?」
そんなことできる訳がないのに、どうしてペンギンがそんなことを言うのか理解できない。
「見つけるまて探すに決まってるだろ!!」
ペンギンの胸ぐらを掴んで怒鳴ったローに、ペンギンも怒鳴り返した。
「シーレーンがどれぐらい潜るか知ってて言ってんですか!? がいくら泳ぎが得意でも、人間が耐えられる長さじゃない!! この広い海で、海の生き物に食い散らされたを見つけるまで探す!? 本当にそれが船長命令でいいのか!!」
時間が過ぎていく。時が経つほどの生存率は下がっていくのに、残酷に、誰にも止められずに。
「……夜の潜水は危ない。二次被害の危険性もあるんです」
苦渋に満ちたペンギンの顔。考えれば当たり前のことなのに、それを考えられもしないほど、今の自分は冷静さを失っているんだろう。
こんなとき船長は誰よりも冷静でなければいけないはずなのに。
「夜明け……せめて夜明けまで。明るくなったら捜索もしやすくなるだろ。せめてそれまでは」
はい、とペンギンは頷いた。
夜が明けて、付近が明るくなってもは見つからなかった。捜索の打ち切りにクルーたちは食い下がり、疲れ切った体で海に入ってを探し続けた。
事故が起きてもおかしくない危険な捜索状況に、ローは中止を命じるしかなかった。
『このグローブの錆にしてくれる!』
『血が出るまで殴る気か』
たわいないやりとりをした、そのたった一日後のことだった。