第9章 ヘイアン国
引き戻さないと際限なく話が脱線しそうで、ローはげんなりしながら話を戻した。
「兄貴がいたし……国を追われて混乱してた。俺に王の候補を探すとかできるわけないって思った。でもマルガリータからちゃんの話を聞いて、王になるなら彼女みたいな子じゃないかと思ったんだ。――シロクマと話ができるなら神とだって話せるはずだ!」
ぐっと拳を握ったマリオンに、ローは唖然とした。なんだその基準。
「ベポは以外とも喋るだろ……」
「そうだけど! ちゃんは電伝虫とかぬいぐるみとも会話するし! でっかいイルカとも会話できるはず!」
「海王類をでっかいイルカと同じにするな」
失敗すれば食われるのだ。だいたいはハートの海賊団のソナーであって、ヘイアン国の王になんかなられちゃ困る。
「そこをなんとか兼任で」
ローの心を読んでマリオンはセールスマンのように拝み倒した。絶対イヤだ。
◇◆◇
「て、敵襲ー!!」
甲板からベポの悲鳴が聞こえてきたのは、マリオンとらちもあかない問答を繰り返していた時だった。
甲板にはベポと一緒にがいるはずだった。反射的にローは鬼哭を掴み、能力で最短距離をショートカットする。
甲板ではベポが人面鳥の群れにつつき回されていた。人の顔に魚の胴体、鳥の羽と足を持つ怪物・ハルピュイアだ。
「……!?」
甲板には一緒にいるはずのの姿がなかった。
「キャプテン……!!」
呼び声は、はるか上空から聞こえた。
夜の空でもはっきり見える、くま耳のついたの白いパーカー。ハルピュイアに掴まれたは、必死にもがいてローに手を伸ばす。
「ROOMーー!!」
を取り返そうとローは最大限に能力領域を広げた。
だがギリギリ、届かない。
(クソ……!!)
甲板の手すりを足蹴に、ローはに向かって思い切り飛んだ。もう一度ROOMを広げ直し、を掴んだハルピュイアに鬼哭の鞘を投げる。
翼に当たってもハルピュイアはびくともしなかったが、鞘と位置を入れ替えたローが斬りつけると、甲高い悲鳴を上げてを落とした。