第9章 ヘイアン国
「王候補を探すのがコマ家の役目だと言ったな。どうやって探す?」
「ええと、その……勘で」
白けた顔をするローに、マリオンは「これは本当だって!」と言い募った。
「初代の王は、コマ家の先祖と結婚したんだ。政略結婚じゃなく、コマ家の先祖の恋人が王になった。その後もコマ家の人間と王の結婚は何度もあった。つまりええと、コマ家の人間がびびっと来た相手が王になる可能性が高い!」
マリオンは力説したが、ローは額を押さえた。何だその選定基準。
「じゃあホワイトガーデンの人形やセブタン島で殴られてた娘も王候補か」
「え、なんで? 別にスイレンちゃんやあの子にはびびっと来たわけじゃないよ。王候補じゃなくてもすべての女の子に優しくするのが俺のポリシー」
素で不思議そうに言われて、ローも不思議な生き物を見る気分だった。どこから来るんだ、そのモチベーション。
「……神の声を最初に聞いた、初代の王も盲目だったって言われてる」
組み合わせた手に視線を落とし、ぽつりぽつりとマリオンは話した。
「王に必要なのは『聴く力』――これはもともと人間が持ってる力らしいんだ。武術の達人が相手の動きを先読みしたり、離れたところにいる生き物の気配を感じ取ったりするのと一緒だって。見聞色の覇気とか言うらしいけど……目が見えない人は、この力が発達しやすいって言われてる。
全部マダム・シュミットの受け売りなんだけどね。マダムは覇気の中でも、武装色の覇気使いなんだ。王の資質をもっと細かく分析できないか、父と祖父が話を聞きたがって国に招いた縁で、クーデターの時にマルガリータと一緒に助けてもらった。それ以外の理由もあった気はするけど。うちって代々女好きだから」
「お前の家が女好きの話は別にいい……」